その瞬間を捉える準備は出来ているか?JOJI SHIMAMOTO × MetropolitanCROSSbottle
2024/03/10
1月某日、人気のクリーニングクロスブランド〈MetropolitanCROSSbottle(メトロポリタンクロスボトル)〉が、あるプライベートローンチイベントを行っていた。〈MetropolitanCROSSbottle〉デザイナーのGUSSYのインスタグラムによると、フライヤーには「JOJI SHIMAMOTO × MetropolitanCROSSbottle」の文字が。それは一体、どのようなコラボだったのだろうか?JOJI SHIMAMOTOとは何者なのか?……本記事では、このローンチイベントで発表された新作コラボクロスの魅力に迫る。
JOJI SHIMAMOTOという写真家/ロマンチスト
〈MetropolitanCROSSbottle〉の新作「偶然の伝染」は、JOJI SHIMAMOTOとのコラボ作品だ。まずは彼がどのようなアーティストなのか、ご紹介したい。
JOJI SHIMAMOTO(嶋本 丈士)は、1983年生まれ、千葉県出身の写真家だ。
カリフォルニア州オーハイの高校で写真部に入り、暗室で青春時代を過ごす。2007年、アカデミー・オブ・アート大学(サンフランシスコ)写真科卒業。在米中にアメリカで数々の写真展を開催した。2008年の帰国後も精力的に活動を展開し、新宿の「THE ART COMPLEX CENTER OF TOKYO」にて大規模な写真展を開催。また『STUDIO VOICE』の別冊として発行された「日本の100人の写真家」 にも選ばれた。以降「ラフォーレ原宿」や「BLUE NOTE TOKYO」での写真展示、 「BASEMENT GINZA」での個展、さらにニューヨークで開催された「NEW CITY ART FAIR」のメインイメージ写真に起用されるなど、自身のアート活動の幅を広げている。
また優れたクリエイティブディレクターとしての一面もあわせ持ち、2014年に麹町のビル一棟を美術館に変貌させたアートイベント「#BCTION 」を主宰。同イベントは約2週間の期間中来場者1万3千人を記録した。2018年春には、 渋谷に新しく誕生した「MAGNET BY SHIBUYA109」の施設内壁画をプロデュースしている。
日本を代表するアーティストの一人であるJOJI SHIMAMOTO。彼は写真家であり、クリエイティブディレクターでありながら、自身を表現する言葉として必ず「ロマンチスト」と添えている。公式ウェブサイトの説明文もこうだ。「東京をベースに活動中のロマンチスト写真家、 嶋本丈士のポートフォリオサイト」……ロマンチスト写真家って、何だろう?その言葉の背景には、JOJI SHIMAMOTO作品の特徴があるようだ。
物語のワンシーンに巡り合う
〈MetropolitanCROSSbottle〉のページより、JOJI SHIMAMOTOの説明文を引用する。
「作品はその場の匂いや、音、湿気までも感じさせる。まるでLPレコードの針のノイズのように、安らぎと懐かしさを感じさせてくれる。また一瞬を切り取った写真は、前後のストーリーが映画のように想像できる。観る者の感性が呼び覚まされるような希有なフォトグラファーである」
この「前後のストーリーが映画のように想像できる」写真という点が、JOJI SHIMAMOTOのロマンチストたる所以ではないだろうか。
実は本コラボ作品をローンチする少し前に、JOJI SHIMAMOTOは『THE SCHENE - MOMENT OF TRUTH -』という写真展を開催した。写真展開催にあたり、彼自身がこのような言葉を寄せている。
「映画のワンシーンのような瞬間に巡り合える奇跡。写真は永遠に続く旅。一枚一枚の写真には物語があり、無限のストーリーを奏でている。そして、写真家がとらえたその瞬間はこの世界で実際に起きていた本当の瞬間。写真にはロマンが詰まっている。写真家は常に世界をファインダーから覗き見して最高の瞬間をコレクションしているロマンチストだ」
瞬間とは前後に永遠に続く物語のワンシーンであり、写真家とは、そんな瞬間をコレクションするロマンチスト。その姿勢こそ、JOJI SHIMAMOTOがロマンチスト写真家を名乗る理由なのだろう。
実際にJOJI SHIMAMOTOの写真は、前後の物語を想像させてくれる深みがある。その瞬間だけの空気の揺れがある。彼の写真作品に対峙するとき、私たちもまた、その瞬間を想うロマンチストなのだ。
偶然の伝染 - 写真とメトロポリタンクロスボトル
JOJI SHIMAMOTO × MetropolitanCROSSbottleのコラボ作品には「偶然の伝染」というタイトルが付けられている。スケートボードに乗った男性を写したカラー写真と、幾何学模様にも見える建築的なモノクロ写真。両面ともに、その前後のシーンを自由に想像させる写真だ。さらには、両作品の間に関連性を見出すかどうかもまた、我々に委ねられているのだろう。幾通りもの物語が、この一枚に詰まっている。
偶然の伝染……予期せぬことが繋がっていくということはすなわち、ストーリーを紡いでいくというふうに言い換えられないだろうか。私たちは、偶然を伝染させることのできるロマンを持っているのではないだろうか。
さて、〈MetropolitanCROSSbottle〉のクロスは、その発色の良さから写真作品と相性が良い。今作もまた写真の趣を崩さず、しかし鮮やかに仕上げられている。
55cm角なので、磨くのはもちろんスカーフのように使うのもオツだろう。JOJI SHIMAMOTOが捉えた瞬間を、自分自身の瞬間に重ねてみよう。偶然はあなたにも伝染するのかもしれない。
センスとレンズを磨くのは
JOJI SHIMAMOTOが自身のインスタグラムで「センスとレンズを磨くのは @metropolitancrossbottle」と載せていて、あまりの言葉の巧さに唸ってしまった。確かにこれで磨けば、センスもレンズも曇りなく輝くだろう。
先に紹介したJOJI SHIMAMOTOの写真展「THE SCHENE - MOMENT OF TRUTH -」の「MOMENT OF TRUTH」とは、此処一番とか、正念場とかいう意味があるそうだ。
確かに人生は、この物語は、此処一番の連続なのかもしれない。
だとしたら、あなたは、その瞬間を捉える準備が出来ているか?
次のシーンがやってくる前に、センスとレンズを磨いておこう。あなたの物語は、あなた自身が紡いでいくのだ。
山田ルーナ - 文