スポーツ"にも"使えるジャガード織りグラスコード。DIFFUSER「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」
2024/05/30
平日の朝、まだ静かな街の中を走る。背景に立ち並ぶビルは昼には圧迫感を感じるが、朝は不思議なくらい清々しい雰囲気だ。いつもの距離を走り終え、シャワーを浴びて軽く朝食をとったら、パリッと着替えて仕事へ。「Well done」。朝のランニングの日課のおかげで、今日もスマートに乗り切れそうな気がする。
さて、DIFFUSERが新たに発表したグラスコード「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」の語感から情景を想像してみたのだが、私の思うアーバンスポーツスタイルって、こういう感じ。しかし実際のところDIFFUSERはどのような想いで、ブランドの代名詞であるグラスコードの新作に「URBAN SPORT STYLE」と名付けたのだろうか?ジャガード織りによる製造方法とデザイナーの想いをご紹介しつつ、私たちが今取り入れるべき「URBAN SPORT STYLE」について考えてみよう。
石川県の工場で作られるジャガード織りコード
今作「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」は、ジャガード織りによるグラスコード。ジャガードとは、洋服の生地で耳にする機会が多いかもしれないが、織ることによって模様や柄をつくった生地のことだ。発祥は19世紀初頭のフランス。織っているため立体的で厚みがあり、高級感を感じられる。
説明が重複するが、表現されている模様や柄が織りによってつくられている、ということが、ジャガードの特徴である。つまり、プリントではないのだ。ある模様を表現したい時、まっさらな生地に印刷してしまえば安価で早いが、ジャガードにおいてその模様は、縦糸と緯糸の種類を変え、色を変え、さまざまな工夫を凝らして(そしてもちろん技術を用いて)織り上げられる。
コストや効率という面ではプリントに及ばないが、そこを度外視するからこその美しさがジャガードにはある。デザイナーが本当に作りたいイメージをかたちにしたい場合のみ、用いられるような生地ではないだろうか。
「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」も例に漏れず、デザイナーが本当に作りたいイメージをかたちにしたかったからこそジャガードが選ばれている。その理由は後述するとして、まずはDIFFUSERの理想を叶えた工場についてご説明したい。
「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」に用いられているオリジナルのジャガード織りコードを製造したのは、石川県のとある工場。実は石川県は、合繊長繊維織物の製造において日本の40%を占めており、その界隈ではもっとも信頼できる地域の一つである。DIFFUSERのデザイナー広瀬氏は以前から、ジャガード織りコードをつくるならこの工場で、と考えていたそうだ。
デザインをもとに「パンチカード(紋紙)」と呼ばれる文字通り紙に穴を空けた図面を作成し、染色、整経(※たて糸の細かな調整で重要な工程)された糸を使用して織り上げる、というのが製造方法の大まかな流れであるが、これがシンプルに見えて大変な作業。特に「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」は生地ではなく紐なので、かなりシビアに調整しないと柄の輪郭が失われてしまうという懸念があった。何度もの微調整を繰り返し、ようやく完成したのが、皆さまにお届けする「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」だ。
DIFFUSER、という文字に注目してみてほしい。これが織りで表現されたブランドロゴだなんて、と、ちょっとうっとりしてしまう。織りならではの温かみが感じられるのも良い。こういう表現が正確かどうか分からないが、これは愛せるな、と私は思った。プリントでは絶対に感じることのできない種類の愛着。目で見て、手で触れて、そこに模様があることの愛おしさ。もちろん見た目のカッコよさにも惹かれるが、愛着を感じられるというのはそれ以上に重要なポイントかもしれないと、「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」を手に取りつつ思うのだった。
ジャガード織りに求めた「スポーツにも使える」かけ心地
ここからはデザイナー広瀬氏の思惑を深掘りしてみよう。
今作「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」には、このような一行が添えてあった。
【スポーツにも使えるグラスコード】
つまり広瀬氏はジャガード織りという特徴を利用して、これまでDIFFUSERになかったスポーツグラス用のグラスコードをつくりたかったのだ。
ジャガード織りコードには、スポーツ利用に適したいくつかの特徴がある。
まずは、そのかけ心地。ジャガード織りコードは厚みのわりに軽く、また筒のような形状をしているため、肌に触れた時の不快感がない。ふわっと柔らかく首に沿うので、走っている時に紐が上下に動いても、擦れて痛くなるようなことがないのだ。
また、今作は水に強いナイロン糸を用いているため、汗対策にも適している。汗を吸って重くなったり臭いが気になったりといった着用時の不快感を、軽減してくれるだろう。そもそもジャガード織りという製造方法は、事前に糸を染めるため、色落ち、色褪せ、色剥げなどの心配がない。使うたび洗濯をすることも可能なので、長く綺麗に使うことができるはずだ。
だから自信を持って冒頭のような朝ランに活用してほしい……と言いかけて、ふと、一体どれくらいの人がランニングという趣味を持っているだろうと考え手を止める。そしてここでもう一度【スポーツにも使えるグラスコード】というDIFFUSERのコンセプトを思い出し、あっ、と膝を打つ。そうか。デザイナー広瀬氏の本当の狙いは、スポーツ”にも”使える、というところにあるのかもしれない。
スポーツにも使えるグラスコード「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」
以前お洒落な男友達が、その時履いていたスニーカーについてこんなことを話していた。「これランニング用に買って実際走る時も履いてるんだけどさ、カッコいいから普段着にも使ってるんだよね」。
「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」の魅力について考えながら、私はこのエピソードを思い出していた。
DIFFUSERが表現したかったことって、そういうファッションの寛容さ、流動性ではないだろうか。イカしたランシューを街でも履くみたいに、一本のグラスコードを普段使いにもスポーツにも使う。別にスポーツに本気の人じゃなくても、手にとっていい。だってそのグラスコードは、とても寛容で、どちらのあなたにもきっとフィットしてくれるから。
そして私は「URBAN SPORT STYLE」について、冒頭のイメージを改めるのだった。出社前に朝ランをすることが「URBAN SPORT STYLE」ではないのかもしれない。むしろその都会性は、多様性と言い換えることができるのではないだろうか。実際スポーツをしてもいいし、ファッションとしてスポーツスタイルを楽しんだっていい。全部ひっくるめて、それこそがDIFFUSERの狙う「URBAN SPORT STYLE」なのかもしれない。
「URBAN SPORT STYLE GLASS CORD」は、日常に新しい視点を与えてくれるようなグラスコードだ。是非3色から気に入った色を取り入れて、あなたなりの「URBAN SPORT STYLE」について考えてみてほしい。
山田ルーナ - 文