DIFFUSER / Mr. Gentleman EYEWEARがNYで描く「余裕のある大人の日常」2024AW
2024/12/10
ブルックリン。この街が醸し出すヴィンテージとモダンの絶妙なバランスは、多くのクリエイターにとって魅力的な舞台だ。今回、DIFFUSERとMr. Gentleman EYEWEARは、この街を舞台にそれぞれ異なる視点で2024AWのビジュアルを撮影した。住宅街の静かなスタジオから、都会のざわめきに包まれたウィリアムズバーグまで。撮影に立ち会ったDIFFUSERデザイナー広瀬氏のスナップ写真とともに、その舞台裏を覗いてみよう。
DIFFUSER:ヴィンテージを生かしたリノベ空間で紡ぐ新しいスタイル
DIFFUSER 2024AWの撮影が行われたのは、ブルックリンの住宅街に佇むヴィンテージ建築をリノベートしたスタジオ。ここは、若い夫妻が暮らしながら運営する特別な空間だ。古い建物の味わいを残しつつも現代的なセンスで再構築されたその空間には、オーナー夫妻の美意識が宿っている。
日本で言うところの古民家リノベーションのような感覚だろうか。例えば、天井を縁取る木枠や階段、そして手すりには60年以上前の素材がそのまま活用されていて、新しくできた建物にはない趣深さがあった。
また外にはオーナー愛用のヴィンテージベンツが停められており、建物を取り囲む空間全体が、時間を超越した特別な雰囲気を放っている。
今回のDIFFUSERのコレクションには、余裕のある大人にこそ似合うようなアイテムが多く含まれている。このスタジオは、そんなDIFFUSERの今シーズンのテーマにぴったりだったのではないだろうか。手に触れるとわかる高品質な素材感や、細部に込められたディティールが、ヴィンテージスタジオの空気感と絶妙にマッチ。やはりDIFFUSERのプロダクトは、生活にこだわりがある人の日常にこそ溶け込むのだなと感じた。
そしてこの空間は、モード系のモデルたちによってさらに引き立てられた。若々しい印象というよりは、落ち着きと洗練を兼ね備えた雰囲気を持つ男女2名。DIFFUSERのルックは毎シーズン素敵なモデルたちを見るのも楽しみの一つだが、今回も雰囲気抜群のビジュアルを楽しんでいただけると思う。
空間とモデルとの化学反応により、DIFFUSER 2024AWのアイテムが醸し出す「大人の余裕」が、そのまま撮影の仕上がりにも反映されたようだ。写真に写るのは単なるプロダクトではなく、物語のあるスタイルそのもの。ぜひカタログを取り寄せて、その世界観をたっぷりと味わってみてほしい。
ちなみに、DIFFUSERデザイナー広瀬氏は撮影のオフ日、NYから北に2時間半車を走らせて、ハドソンにあるアンティーク・ヴィンテージショップを訪れたのだそうだ。目移りするほど沢山の魅力的な家具や小物から、ディスプレイ用のラグなどを調達。今後のアイテム写真には登場するかもしれないので、そんな裏話もお耳に入れつつ、今後の展開を楽しみにお待ちいただきたい
Mr. Gentleman EYEWEAR:多彩なロケーションで表現するカジュアルと洗練の融合
一方、Mr. Gentleman EYEWEAR 2024AWの撮影では、ブルックリンのウィリアムズバーグにあるスタジオが主な舞台となった。
住宅街に比べるとやや賑やかなこのエリアに建つ、古いお店を改装したスタジオを使用。中庭のある良い雰囲気のスタジオで、DIFFUSER 2024AWを撮影したスタジオとはまた異なる、開放的でアーバンなヴィンテージ感が漂っている
しかしMr. Gentleman EYEWEARの撮影はスタジオの中にとどまらず、周辺のロケーションでもその世界観を発揮した。例えば、高速道路の高架下や、教会の前。NY在住カメラマンならではの視点のもと、さまざまなロケーションで撮影が行われ、その多様な風景がブランドの幅広い魅力を引き出したのだ。
ウィリアムズバーグは、元々はアーティスティックで小洒落た店が多いエリアだったが、昨今はヨーロッパのラグジュアリーショップが立ち並ぶなど、進化が目覚ましい街。そんなウィリアムズバーグ特有のざらついた都会的な背景が、Mr. Gentleman EYEWEARのルックに新たな命を吹き込んだと言えるだろう。
また、今回のMr. Gentleman EYEWEARのコレクションではサングラスが一際魅力的であるが、このサングラスと街の雰囲気がマッチしていたのも特筆すべき点である。
新たに登場したメタルフレームは、マチュアなデザインとともに新たな特徴が加えられ、Mr. Gentleman EYEWEARらしい洗練された雰囲気を纏っている。カジュアルな印象を持ちながらも、きちんとした装いにも溶け込むデザインは、まさに現代のライフスタイルに寄り添うアイウェア。都会のさまざまな魅力を自在に行き来するウィリアムズバーグという街だからこそ、この魅力が十分に引き出されたのだと思う。
なお今回のモデルは、「JIRO」のルックが好評で再キャスティングされた男性モデルと、初めて起用された若いロシア人女性モデル。安定感とフレッシュさを兼ね備えた、今のMr. Gentleman EYEWEARらしいビジュアルに仕上がった。
ロケーションの多彩さとモデルたちの個性が掛け合わさって表現された「洗練とカジュアルの融合」を、ぜひルックを通じてお楽しみいただきたい。
それぞれのブランドが描いた「余裕のある大人の日常」
DIFFUSERとMr. Gentleman EYEWEARが今回秋のNYで描いたのは、異なる切り口からの「余裕のある大人の日常」だったように思う。
住宅街に佇む静かな空間で紡がれたDIFFUSERの物語と、都会のざわめきの中に広がるMr. Gentleman EYEWEARの躍動感。そのどちらもが、ブルックリンという街を背景に、ブランドの独自性を引き立てていた。
ファッションが単なる流行を超え、ライフスタイルや価値観をも映し出す存在であること。それを体現するこの2ブランドの撮影は、単なるプロモーションではなく、「今」を生きる私たちに新たな視点を提供してくれるものになったと言える。
これらのルックがカタログとして私たちの手に届く頃には、きっとブルックリンの風とともに、それぞれのブランドが伝えたかったメッセージがしっかりと心に刻まれることだろう。
山田ルーナ - 文