MIDO Eyewear Show 2025 - アイウェアの未来を牽引する場で感じた「夢の広がり」
2025/03/10
2025年2月。イタリア・ミラノで開催されたメガネの国際見本市「MIDO Eyewear Show」に、DIFFUSERとMr. Gentleman EYEWEARが初出展した。「Silmo Paris」ともまた雰囲気の異なるこの会場で、彼らはどのような反応を得て、どのような成果を持ち帰ったのだろう。初挑戦を終えたばかりの今の率直な思いを知るべく、代表の広瀬氏に話を聞いた。
世界二大見本市のひとつ「MIDO Eyewear Show」とは
イタリア・ミラノで毎年2月に開催される「MIDO Eyewear Show(ミド・アイウェアショー)」は、アイウェア業界を代表する展示会のひとつ。世界中の名だたるアイウェアブランドが集結することで知られており、フランス・パリの「Silmo Paris(シルモ・パリ)」と並んで二大展示会とも呼ばれている。
「Silmo Paris」が新しいブランドの挑戦を後押しする場だとしたら、「MIDO」は市場の動向をより意識した場だと言えるかもしれない。流通の広がりが重視され、平たく言えば「Silmo Paris」に比べてビジネスとしての側面が色濃いのだ。
というのも、イタリアは多くのアイウェア会社が拠点を構えており、アイウェア産業の中心地として知られる地域である。市場の規模が大きいだけでなく、トレンドを生み出し、業界を牽引する存在としての影響力も絶大。裏を返せば、「MIDO」のお墨付きがあれば絶対、という消費者側の安心感もある。
そんな「MIDO」の中で近年注目を集めているのが、アカデミーという特別なセクションだ。
このセクションでは、運営側がクリエイティブなブランドを選出し、共通什器を用意。ブランド側はその中に商品を展示する形式となっており、規模の大小に関わらず、「MIDO」が推奨するブランドとしてバイヤーにアピールできる。この取り組みは「MIDO」独自のもので、前回も最も多くの来場者が集まる人気セクションだったようだ。
アカデミーセクションでのDIFFUSERとMr. Gentleman
今年はそのスペースが3倍に拡張され、より注目を集める場となったアカデミーセクション。DIFFUSERとMr. Gentleman EYEWEARはこのアカデミーセクションから、今回初めて「MIDO Eyewear Show」に参加した。
結果は、予想を超えるほどの反響。
実は「MIDO」については海外のエージェント的にも、先の理由から市場に受け入れられやすいもの、つまり「分かりやすいもの」「売れやすいもの」が選ばれる傾向にあるとされていたため、質が良いがその分価格帯も高く玄人受けする日本のブランドがどこまで認められるかは未知数だった。
しかし、実際にブランドが現地でプレゼンテーションを行い、直接バイヤーと対話することで、期待以上の手応えを得ることができたようだ。
次の時代の流れをつくる新しい選択肢
中でもDIFFUSERのメガネケースは、特に高い評価を受けた。
ヨーロッパではケースが重要視される傾向があり、日本のようにグラスコードや多機能アクセサリーが主流ではない。とはいえ高品質なケースが揃っているかというとそうではなく、どちらかといえば低価格で大衆受けするものの販売が盛んだ。どの国でも、アイウェアアクセサリーはアイウェア自体と比べて素材や技術の研究開発が活発ではなく、時代についていけなくなるのが常だからである。
そのためDIFFUSERの高品質なレザーケースは、バイヤーたちにとって新鮮だった。「ラグジュアリーなものがほとんど存在しない」という市場のニーズと合致し、好評を博したのだ。選択肢がなかったから選ばれていなかっただけ——エージェントとDIFFUSER広瀬氏にとって今年の「MIDO」は、そんな気付きを改めて得るきっかけとなった。
またMr. Gentleman EYEWEARについても、イタリア市場の既存トレンドとは異なるデザインが評価された。イタリアでは太めのセルフレームが主流だったが、その流れが次世代の消費者層には飽和しつつある。そんな中、Mr. Gentlemanの繊細でクラシックなデザインは、トレンドに逆行しながらも、新しい選択肢として注目されたのだそうだ。
DIFFUSERとMr. Gentleman EYEWEARは、いずれも次の時代の流れをつくる新しい選択肢として、ミラノの会場を訪れた人々の印象に残ったのではないかと思う。
MIDOで広がる新たな市場とアイウェアの未来
「MIDO」では、新たなバイヤーとの出会いも多くあった。「Silmo Paris」で繋がった顧客との再会はもちろんのこと、「MIDOにしか来ない」という少なくない数のバイヤーにアプローチすることができたのだ。
特にドイツ人バイヤーが多く訪れ、「Silmo Paris」とは異なる層との接点を持つことができた。これにより、フランスだけでは拾いきれなかった店舗とも繋がることができたと、広瀬氏は考えている。
また、アイウェア業界におけるアイウェアアクセサリーの重要性も改めて実感した。メガネ自体は時代の流れに合わせてデザインが変化し続けている一方で、小物の進化は業界全体で遅れを取っている。店舗の内装やディスプレイさえも洗練されていく中で、アイウェアアクセサリーに関しては、意外にもラグジュアリーな選択肢が少ないという状況が続いていたのだ。DIFFUSERのプロダクトは、こうした業界の隙間にフィットし、バイヤーたちの関心を引くことができた。
今まで日本のブランドはイタリア市場で苦戦すると言われていたが、それは固定観念によるものだったのかもしれない。実際には、洗練されたデザインや高品質な素材への関心が確実に高まっている。単なる流行ではなく、本質的な価値を持つアイテムが求められていることがわかったことだけでも、今回「MIDO」に参加した大きな収穫と言えるだろう。
「夢は広がりますね」と、広瀬氏は話した。
次なる挑戦は春に控える東京の展示会だ。「MIDO」での手応えを糧に、彼らはすでに、次のステップへの大きな一歩を踏み出している。
山田ルーナ - 文