ジョイエブリタイム株式会社

AKONI「JUPITER」と枯山水の美学 ─ 共通するその神秘性について

AKONI「JUPITER」と枯山水の美学 ─ 共通するその神秘性について

2025/05/10

スイス発のラグジュアリーアイウェアブランドAKONIの新作「JUPITER」と、そのデザインに影響を与えたという、数百年の伝統を持つ日本の枯山水庭園。一見かけ離れた両者が共有する美意識について、本記事では紐解いてみたい。未来的なアイウェアと静謐な石庭、その交差点には、形を超えた神秘性と深い美の物語が広がっていた。

未来への探求。JUPITERのデザインとクラフトマンシップ

まずはAKONIの2025SS新作「JUPITER」についてご紹介したい。このアイウェアは、NASAの木星探査機ジュノーから名付けられたモデル。その名が示すとおり、探求の精神を宿したデザインだ。

宇宙の惑星を想起させる丸く大胆なレンズシェイプも魅力的だが、最も特徴的なのは、フレームを極限まで削ぎ落としたリムレス構造。レンズに直接穴をあけてテンプルと繋ぐそのデザインは、まるで余白の美を活かす日本美術のようなミニマルさをもつ。

 

実際、AKONIと日本の関係は深い。彼らは伝統と革新の融合を目指し、「JUPITER」を含むすべてのプロダクトを、日本の熟練工芸士たちの手によって生み出しているのだ。

例えば、サイドシールド部分をご覧いただきたい。レンズ側面に極細のテグス糸を用いて装着されたアセテート製サイドシールドは、日本の職人の技術の賜物。滑らかな曲面と繊細なラインをあわせ持っており、極めて高度な技術が用いられていることをお分かりいただけると思う。

「JUPITER」のデザイン美学でもっとも際立つのは、素材やフォルムのコントラストの妙だろうか。たとえば、平坦で直線的なテンプルと、滑らかに丸みを帯びたテンプルエンドとの対比が生む調和など。重厚感と軽やかさ、強さと繊細さといった相反する要素がフレーム全体で動的に拮抗し、バランスしている様は、まるで一つの芸術作品だ。

 

こうしたディテールの積み重ねにより、「JUPITER」は単なるアイウェアの域を超え、物語性を感じさせるオブジェとなっている。

静寂が描く宇宙。枯山水の歴史と美意識とは

そんな「JUPITER」を世に送り出した、現在のAKONI。ここで、彼らがいま全世界共通で使っているディスプレイをご覧いただきたい。

どこかで見たことがあると感じる方が多いのではないだろうか。これは日本の庭園様式、枯山水(かれさんすい)にインスパイアされたディスプレイである。

 

苔むす庭に白砂と岩だけが配された光景――枯山水は、日本の禅寺で発達した独特の庭園様式だ。水を一滴も使わずに水のある風景を表現するその手法は、「水のないところに水を感じさせる不思議な様式」とも評される。派手な草花はなくとも、素朴で慎み深いその景色から、我々は無限の空間を感じ取ることができるのではないだろうか。それは物質的な水の存在を超えて、心象の中に宇宙さえも描く装置なのかもしれない。

 

そんな枯山水をテーマにアイウェアをディスプレイするAKONI。

 

一方は最新鋭のアイウェア、もう一方は古来の石庭。この二つが出会う接点には、日本と西洋、美術と工芸、過去と未来の融合が横たわっている。

そして実は、ディスプレイだけでなくアイウェアデザインにおいても、AKONIはこの美しい日本庭園から多くのインスピレーションを得ているようだ。
例えば、ブランドアイコンの一つである縞のデザインも、枯山水にインスパイアされたもの。その縞は模様ではなく実際に彫られており、白砂に引かれた砂紋を想起させる。職人が難しい技術を用いて実現させた、見た目に反した滑らかな触り心地が特徴的だ。

AKONIのデザインチームはスイスを拠点にしながら、日本の職人技と美意識に深く敬意を払っている。彼らが枯山水からインスピレーションを得たというのも、単なる意匠上の思いつきではなく、哲学的な共鳴があったからこそだろう。

 

以上の繋がりから、AKONIはブランドカタログにも、しばしば枯山水の写真を採用している。そのミニマリズムと調和の精神は、JUPITERの設計思想と見事に響き合っているのだ。

神秘性の共鳴。AKONIの哲学と枯山水の美が出会うとき

「JUPITER」のフレームに目を凝らすと、そこにはまるで、枯山水の石庭を見る時のような発見の体験がある。

 

今作は絶妙なバランス感覚をもつアイウェアだと思うが、それは重い石と流れる水(あるいは空気)とのバランスを表現した石庭の発想にどこか似てはいないだろうか。日本文化には古くから陰と陽、動と静、満ちることと欠けることといった二項の調和を尊ぶ思想があるが、「JUPITER」の大胆さと繊細さの二律背反を統合するアプローチにも、そうした陰陽の美学が下地に流れているように思える。

さらに注目すべきは、両者に共通する神秘性である。枯山水が「答えのない問い」を投げかける静かな神秘を湛えているように、「JUPITER」もまた、見る者に様々な物語を想起させるアイウェアだ。例えば、その名が示す木星という惑星の持つ神秘。JUPITERの丸いレンズに映る景色は単なる現実の風景だが、そのフレームに込められたコンセプトを知るとき、我々はそこに、単眼鏡で宇宙を覗き見るようなロマンを感じるだろう。

美の対話から生まれるもの

「JUPITER」というアイウェアと、枯山水という庭園。一方は顔に掛ける小さな工芸品、他方は人が中に入って瞑想する広大な空間──スケールは違えど、そこに流れる美意識には驚くほどの共通点があった。

ともに限られた要素で無限を表現し、受け手の心に委ねる点で共鳴し合う。 そして何より、静かに胸を打つ神秘性がある。AKONIの「JUPITER」を手にとって眺めるとき、我々は単なるアイテム以上のものを感じ取ることができるだろう。それはまるで、枯山水の庭を前にした時、石と砂以上の深淵を感じるのと同じように。

 

時代や分野を超えた美の対話は、新たな創造を生む原動力となる。ファッションと伝統芸術の出会いである「JUPITER」と枯山水の物語は、現代における美の可能性を示唆している。静と動、古と新、東と西が出会うところに生まれる洗練――そこには計り知れないロマンが横たわっているのかもしれない。

私たちもまた、そのロマンを共有し、自らの美意識を磨くヒントを磨いていこう。互いに響き合う神秘を感じながら、深い美的体験の旅へと誘う「JUPITER」と枯山水。その融合から立ち現れるビジョンは、きっと人々の心に、豊かな余韻を残すことだろう。

山田ルーナ - 文

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