2025SS海外訪問レポート。国ごとのカラーと、アジアの眼鏡業界の今。DIFFUSER /Mr. Gentleman EYEWEAR
2025/07/10
2025春夏。DIFFUSERとMr. Gentleman EYEWEARチームは、香港、台湾、韓国の3カ国を視察にまわった。アジアの眼鏡業界の今とは?そして両ブランドは、それぞれの国にどう映っている?今回もライブ感のある現地の写真と共に、Joy every time Inc.広瀬氏のレポートを国ごとにお伝えする。
香港という都市の密度、ブランドの濃度
まずは、今年初めて訪れたという香港について。
現地エージェントとともに1日5件、計20件近い店舗をまわるというタイトなスケジュールの中、見えてきたのはこの都市特有のビジネスの密度だった。
香港は、日本に比べて遥かに土地が狭く、開発が許されている地域は全体のわずか2~3割。その限られた空間に、都市機能と文化が凝縮されている。香港をイメージした時に浮かぶあの混沌とした様子は、見た目だけではないのだ。
広瀬氏は今回、商業の中心であるセントラルだけでなく、ローカル色の強い団地地域まで足を運び、実際の店舗環境を肌で感じたそうだ。驚かされたのは、店舗の狭さやディスプレイ手法の違いといった物理的条件以上に、ブランドに求められる「打ち出し方」の違いである。
香港では、商品の魅力そのものはもちろん、ブランドが提供する世界観や、販売側の表現力が強く問われる。目まぐるしい競争の中、どのショップも独自のストーリーを持って商品の魅力を語らなければならない。
というのも、香港のメガネ業界は、起業にあたり検眼資格と開業資格が必要という厳格な制度があることで参入のハードルが高く、逆に言えば、続いている店舗は皆高い技術と収入を維持している。だからこそ、生き残っていくためには質の良いプロダクトと技術を揃えていることが不可欠で、ゆえにブランドに対する評価も鋭く本質的なのだ
DIFFUSERに対しては、当初「小物は売れない」との声もあったが、現在は有名店を中心に販売実績を伸ばしつつある。例えば、SOGOにあるOptic Masterなど一部の有力店では専用什器を活用し、陳列方法を工夫するなどして、人々の関心を引いているようだ。
今後も、香港ならではの高密度な市場の中で、その存在感を確かなものにしていきたいと、広瀬氏は考えている。
台湾との深化する関係
台湾は、DIFFUSERの展開において、すでに土壌ができあがりつつある国だ。
代理店である「JEpoque」が運営する直営店では、販売スタッフとの勉強会や商品知識の共有が定期的に行われ、販売力の底上げが図られている。今回の訪問でも、別注商品の企画や既存品の拡販に加え、各店の個性を活かす別注カラーリング提案など、具体的な打ち合わせが行われた。
台湾の市場は、一見すると日本と似ているようだが、実は売れ筋の商品などは大きく異なる。文化や収入層、気候の違いが、商品設計とその打ち出し方に影響を与えるからだ。
台湾においてグラスコードがあまり浸透しないのも、ヘルメット文化による使用機会の少なさが要因。しかし逆に、メガネケースやスタンドといった暮らしの中に自然に溶け込むアイテムは好まれ、インテリア性やギフト需要も見込まれている。
また、これら人気商品を中心にタイアップ商品への関心も高まっており、「Royal」など複数の眼鏡店との商品開発が継続中。コラボ商品は現地での反応も良く、継続希望の声が多く聞かれた。こうしたローカライズの積み重ねが、台湾という市場におけるブランドの信頼構築に繋がっているのだと、広瀬氏は話す。
一方、Mr. Gentleman EYEWEARの展開において印象的だったのは、台湾最大級のアイウェアショップ「光明分子(ブライトアイズ)」の存在である。この眼鏡店は同業界の人々からも「ここで扱われること自体が名誉」と言わしめる名店であり、品質・サービス・セレクト基準すべてにおいて台湾随一とされている。
そして、台湾においてMr. Gentleman EYEWEARの独占販売権を持つのが、そんな「光明眼鏡」だ。同店は、プロモーション動画や販売施策においてもMr. Gentleman EYEWEARの世界観を全面的に打ち出しており、その期待の高さがうかがえる。
韓国の変化と、手応えとしての実感
これまで何度か訪れている韓国もまた、マーケットへの浸透がある程度進んでいる都市だ。しかしDIFFUSERに関しては、今回の訪問が大きな転機となった。
今回の訪問において、ある取扱店舗では、「正直これまでは様子見だった」と率直な声が聞かれたそうだ。しかし続けて「その結果、韓国の似たブランドをやめてDIFFUSER一本にした」と明言されるなど、認知と信頼が一段階深まった手応えがあった。広瀬氏は、発信力のある店舗との継続的な対話と、ブランディング戦略が、確実に実を結びつつあることを実感したという。
なお今回はソウルだけでなく、近郊の水原市(スウォン)にも足を運んだ。ここは、LINEやカカオの本社があり、新しい百貨店も続々と誕生している、昨今の注目エリアである。ソウルに次ぐ家賃の高さと開発の勢いをふまえ、韓国市場における次なる地域戦略を考えつつあるようだ。
韓国における流通の構造は、日本とは大きく異なる。韓国において代理店の力はかなり強く、価格やブランディングの統一性を保つには、依然として課題が残るとのこと。しかしだからこそ、今回の訪問のように、直接の対話や販売戦略の共有を通じて、ブランドの価値を守る取り組みが必要だと広瀬氏は考えている。
韓国市場には、DIFFUSERへの興味と期待が着実に芽生えている。今回は、初めて「選ばれる側としてのDIFFUSER」を実感する旅でもあった。
一方でMr. Gentleman EYEWEARも、韓国で高く評価され続けている。前回のデザイナー訪問について特集した記事を、ぜひあわせてご一読いただきたい。
境界を越えてブランドの輪郭を探る
香港、台湾、韓国。それぞれ異なる文化、異なる市場、異なる顧客……その中で共通して見えてきたのは、単なる「商品」としてではなく、「ブランド」として信頼されるための要件である。
Mr. Gentleman EYEWEARは、洗練された美意識と静かな主張を携えながら、そのクラフトマンシップで世界の眼差しに少しずつ応えている。一方のDIFFUSERは、発想のユニークさ、使い勝手の良さ、そして素材やカラーリングへのこだわりを武器に、各国の異なる文脈の中で存在感を示し始めている。
少し話は逸れるが、DIFFUSERは最近、アラブ圏最大のラグジュアリーグループ「Magrabi」での展開が加速している。京都の染色や天然石を使ったグラスコードなど、DIFFUSERならではの素材開発や個性が、国境を越えて評価され始めている証拠である。
「市場を見る」ということは、単に売上や数値を追うだけではない。文化の肌触りを確かめ、店舗と目線を合わせ、街の空気を吸い、対話の中に小さな可能性を見つけていく作業だ。
そしてそれはきっと、プロダクトにもブランドにも、ゆるやかに、しかし確実に反映されていくのだと思う。
充実した表情の広瀬氏を見ていると、今後の展開に期待せずにはいられない。世界により浸透していく両ブランドの今後を、楽しみにしていただきたい。
山田ルーナ - 文


