“厚み”を味方につける。Mr. Gentleman EYEWEARが挑む、太リムと玉型の再構築。「RYAN」「EMMA」
2025/08/20
メガネの印象は、フレームの線の太さひとつで大きく変わる。細ければ繊細に、太ければ力強く。しかしその既成概念にとらわれず、新しいラインの可能性を提示するのが、Mr. Gentleman EYEWEARの新作「RYAN」と「EMMA」だ。
今回リリースされた2型は、ブランドのなかでも異色の存在。というのも、両モデルに共通するのは“太リム”、つまりフレームの縁が厚めに設計された構造なのだが、このブランドらしく、少し捻りの効いた太リムを採用しているのだ。繊細さと力強さが共存するような、新しい太リム。このニュアンスこそが、今回のシリーズに通底するテーマとなっている。
太リムは、強度近視のための美しい選択肢
顔の印象を決定づけるような説得力のある線。それでいて、洗練された印象もそこなわない絶妙なバランス感覚は、Mr. Gentleman EYEWEARならではのものだと言って差し支えないだろう。
しかしまずは、この2型がもたらした功績について、デザイン以外の視点でお伝えしたい。
今やファッションアイテムとして重要な役割を担うメガネだが、それでもやはり、度なしメガネよりは度入りメガネを愛用している人のほうが多いと思う。特に、強度近視のユーザーにとって、メガネはなくてはならない存在だ。
ただその時に問題になってくるのが、レンズの厚み。一昔前は「牛乳瓶の底のようなレンズ」とよく形容されたものだが、技術が進んだ今でさえ、やはり度の強いレンズは美しさに欠ける。繊細なフレームを選んでもレンズがはみ出てしまう、なんてことは日常茶飯事だ。
そこで注目いただきたいのが、太リムである。
太リムは、レンズの厚みが気になる強度近視のユーザーにとって「視力補正」と「見た目の美しさ」を両立させる数少ない手段のひとつ。リムの太い線で、レンズの厚みを包み隠すようにすることで、見た目の美しさを損なうことなく、自分に合った度数のレンズを使うことができるのだ。
「かけられる眼鏡が少ない」と感じていた方々にとって、この2型は新たな選択肢となるのではないだろうか。
レンズ幅42mm。小さなサイズ感に込められた挑戦
今回の新作が注目を集めるもうひとつの理由が、サイズ感の革新にある。
とくに「RYAN」は、レンズ幅42ミリという極小サイズを採用。一般的に45ミリ以上が主流とされるアイウェア業界で、このサイジングはかなり攻めた設計だ。
「RYAN」のような小さな玉型は、顔に対するサイズバランスの調整がシビアになるため、デザインとして成立させるのは難しい。
それでもあえてそのサイズに挑んだのは、「今までにないかっこよさ」を求めたから。
太リムだからこそ出せる重厚感と、あえて小さめに設計された玉型が演出するコントラスト。ミニマルでありながら強く印象に残る絶妙なビジュアルが、このバランスのもとに生まれた。
玉型と多角形。個性がにじむレンズシェイプ
ご紹介した「RYAN」の玉型を含む2型のレンズシェイプについて、もう少し詳しく見てみよう。
「RYAN」の玉型は、オーバルでもなく、ボストンでもない。デザイナーの高根氏曰く、ブランドのラインナップの中でも特にデザインが難しかったのだとか。他のパーツとのバランスにこだわりつつ、クラシックな文脈に収まらない独自のフォルムが採用されている。
一方の「EMMA」は、さらに冒険的だ。
一見するとシンプルな多角形だが、よく見ると内側と外側のライン取りにわずかなズレが仕込まれている。直線の引き方や角度を均一にせず、あえてアンバランスを演出しているのだ。
玉型寄りのアンバランスな多角形。掛けた瞬間は気づかなくても、ふと鏡をのぞいたとき、自分でも「何か違う」ことに気が付くだろう。他人が見たときには尚更。何か違う、何か気になる、何故か見てしまう。……視線を誘うデザインは、まるで静かに語りかけてくるような余白を持っている。
いずれも、シンプルながら品のある佇まいと、着用時ほのかに漂う緊張感が魅力。それは、良い服を着るときにも少し似ている。素敵なジャケットに袖を通すときのように、着用者の雰囲気をわずかに引き締めてくれる、文句なしにかっこいいメガネだ。
太リムに、ポジティブな感性をのせて
今回の「RYAN」「EMMA」には、「太リム=クラシック」「太リム=無骨」といった既成概念を超えた、新たな価値観が宿っている。
レンズの厚みを隠すという“必要性”から出発しながらも、そこに構造的な美しさ、造形への挑戦、そして個性の表現までも融合させたのだ。
強度近視の人がこのアイウェアに出会ったとき、もしかすると自らの視力に感謝さえするかもしれない。視力に制限があるからこそ、今作を味わい尽くせる……そんなポジティブな感性までも、このフレームは与えてくれるように思う。
太リムという字面の重さを、軽やかに、そして美しくまとう。Mr. Gentleman EYEWEARは、そんな新たなスタイルを静かに提示している。
日常をドラマティックに
眼鏡はただの道具ではない。視界を整え、顔の印象をつくり、時に“自分らしさ”を代弁してくれる。太リムの新作2型「RYAN」と「EMMA」は、その存在感で、掛ける人の生き方や価値観にまでそっと語りかけてくれそうだ。
ちなみに、「RYAN」と「EMMA」というモデル名について。
その由来が公に明かされているわけではないが、映画『ラ·ラ·ランド』のあのふたり、ライアン·ゴズリングとエマ·ストーンの名前をふと思い浮かべたのは、筆者だけではないはず。
物語と音楽、ロマンスと現実が交差し、日常への視点をよりドラマティックに変えてくれたあの作品のように、この2型にも、変わらぬ毎日を少しだけ色鮮やかに変えてくれる力が宿っている。
時代が移ろっても変わらないもの。そして、今だからこそ見直したいもの。太リムという伝統的な構造に現代的な感性をのせて、Mr. Gentleman EYEWEARはまたひとつ、新しいスタンダードを更新してくれたようだ。
想像を巡らせながら、ぜひ新作2型を手に取ってみてほしい。この“厚み”を味方につけることで、私たちの(特に強度近視な私たちの)日常は、少しだけドラマティックに演出されるだろう。
山田ルーナ - 文


