ジョイエブリタイム株式会社

Think Different. Think Comnerd. corner 2025AW は、ダサくてお洒落で、クレージー。

Think Different. Think Comnerd. corner 2025AW は、ダサくてお洒落で、クレージー。

2025/09/20

Appleが “Think Different.” というコピーを掲げたのは、1997年のことだった。クレージーな人こそが世界を変える、という強烈なメッセージは、今もなお私たちに大きな影響を与えている。そして2025年秋冬、福岡発のアイウェアブランド「corner」は、まさにそのDNAを引き継ぐように “Comnerd” というテーマを掲げた。新作「Macintosh」と「Lisa」を通じて、このテーマに込められた意味を深掘りしてみよう。

“Comnerd” かっこいいとは何かを問う、ブランドオリジナルの造語

“Comnerd(コムナード)”

 

それは、“Computer” と “Nerd(オタク)” をかけ合わせた、ブランドオリジナルの造語だ。

 

語源となった2つの単語を見るに、“Comnerd” もまたスマートなイメージからはかけ離れているように思えるが、しかしその裏には「かっこいいとは何か」という問いが隠されている。

“Comnerd”をテーマに今回登場したのは、いずれも米アップル社の名機から名を借りた「Macintosh(マッキントッシュ)」と「Lisa(リサ)」の2モデル。

 

両モデルのデザインソースとなったのは、「corner」代表・山本氏の私物である80〜90年代のジャパンヴィンテージだ。かつてダサいとされていたツーブリッジ・メタルフレームのヴィンテージアイウェアを、セル素材に置き換え、あえて今ふたたび掘り起こすことで、現代の「ダサかっこよさ」へと見事に昇華させている。

|corner山本氏私物のアイウェア。80〜90年代のジャパンヴィンテージ

一見ダサいけどお洒落、という、この逆説的な魅力。同ブランドの柔軟な感性と遊び心がいかんなく発揮されたからこそ叶った、稀有なデザインだと言えるだろう。

見たことあるけど、ない。そのシンプルの極地

今回の「Macintosh」と「Lisa」は、いずれもレンズ面が大きく、しかし同時に非常に細身に仕上げられている。

 

サイズ感を差し置いて語るならば、その繊細なプロポーションは一見、量販店にもありそうなほどプレーンに映るかもしれない。しかし、普通であるはずなのに、どこか引っかかる。何かが違う。つまり、見たことがあるようで、ない。「普通」と呼べるものから微妙にズレたこのデザインこそが、本シリーズにおけるデザイナーの狙いであり、かつ挑戦でもある。

 

今回のコレクションは、あらゆる意味でズレを意識してつくられた。

細く、極端に大きなサイズ。それでいて、全体はあくまでシンプルに。試作段階では、立体感を出すために、生地の厚みに変化を加えるなど様々な方法が試みられたが、最終的には「全面均一の厚み」が一番安定するという結論に至った。これがまた、懐かしいようで新しい「ダサかっこよさ」を加速させているように思う。

 

ちなみにカラーは「ブラック」「トータス」「オリーブ」の3色展開。あえてベーシックな色使いにこだわり、シェイプにフォーカスできるよう工夫した。

2つのアプローチ「Macintosh」と「Lisa」と意外な効果

「corner」というアイウェアブランドは、発表の仕方がユニークだ。毎シーズン、ひとつの共通するテーマのもと、ふたつの異なるアイウェアを同時に展開している。

 

一方は徹底的にヴィンテージを研究し再現する「Research」シリーズ。そしてもう一方は、その解釈のもと独自に昇華させた「Sublimation」シリーズ。2作同時に発表されるからこそ、選ぶ側もテーマに対する解像度が上がるので、いちファッションを超えた学びの機会としても興味深い。

 

今シーズン「Research」シリーズにあたるのは、「Macintosh」。先ほどご紹介したように、80年代ヴィンテージのツーブリッジデザインを、セルで再構成したモデルだ。ブリッジの存在感と細いラインがどこか無骨で懐かしく、それでいて今の時代の空気をまとっている。

一方「Sublimation」シリーズにあたる「Lisa」は、「Macintosh」の要素をそぎ落とし、よりシンプルなウェリントンに落とし込んだモデル。あくまで自然体でありながら、しっかりと個性がにじむ仕上がり。

「Lisa」に関して、当時のファッションをよく知る人の中には、“Comnerd”というテーマに疑問を感じる人もいるかもしれない。それは80〜90年代にヘアメタルを聴いていた人が好んだようなシェイプであり、それらのカルチャーはオタクとはかけ離れているからだ。山本氏曰く、その効果は意図していたわけではなく、後から見返してみて初めて気がついたのだとか。今、ダサくてお洒落な雰囲気を突き詰めた結果、当時イケていたアイウェアに辿り着く。デザインの“無意識”の面白さが光ったモデルでもある。

デザイナーからの挑戦状。80年代の「線」を今の感性で

そんな「Macintosh」と「Lisa」だが、実はブランド開始以来、もっとも多く線を引き直したらしい。

 

『これは自分には無理だな』と敬遠されてしまうようなサイズ感だと思いますが、だからこそ掛けてほしい」。そういう想いで、設計段階から何度もディティールを練り直し、ありそうでなかったギリギリの「線」を攻めた。

 

「デザイナーからの挑戦状とも言えるのかも」と、山本氏は言う。

 

ビッグメゾンのランウェイに出てきてもおかしくないような極端なサイズ感でありながら、シンプル。だからこそ、つくる側にとっても掛ける側にとっても難しいメガネだが、ハマったときのかっこよさは格別だ。

 

「デザインを始めた頃の初心に立ち返らせてくれるようなメガネでしたね」と山本氏は振り返るが、これは私たちにとっても、ファッションの初心に立ち返らせてくれるようなメガネかもしれない。

 

普通から少しズレたところで、しかしこれがかっこいいのだと信じて突き進む。そしていつか、そんなズレが、スタンダードを動かしたりするのだ。

クレージーな人たちであれ。Apple的美学

さて、「Macintosh」と「Lisa」というモデル名、そして白黒ポートレートのビジュアル表現。そこにAppleへのオマージュを感じた読者は鋭い。

 

冒頭で少しご紹介したように、今シーズンはAppleの伝説的なCM “Think Different.” のDNAが随所に散りばめられており、ビジュアルイメージにもまた、そのパロディが込められている。

 

Here's to the crazy ones. (クレージーな人たちがいる)

 

そのCMは、この一言で始まった。そして言う。彼らこそが、人間を前進させたのだと。異端であれ、変わり者であれ。そんなメッセージは、今やファッションの世界でも不可欠な価値観となった。

 

「corner」が描く“オタクっぽさ”は、ただのノスタルジーではない。時代や流行に迎合せず、自分の好きなものを貫く精神へのリスペクトであり、その尖った精神をシンプルなメガネというキャンバスで表現したのが、このコレクションなのだ。

 

そういう意味では、このアイウェアをつくった「corner」もクレージーだし、掛ける私たちもクレージー。そしてそれは、最高の褒め言葉でもある。

Think Different. Think Comnerd.

“Comnerd” という言葉を、もう一度考えてみよう。

 

何度も口にしているうちに、“Computer” や “Nerd” の意味は薄れ、いつしか“Comnerd” という響きそのものが、新しい時代の「かっこいい」を体現する言葉に聞こえてこないだろうか?

 

だって、人と違うことって、かっこいい。何かに熱中するって、かっこいい。

 

そんな人の魅力を間違いなく底上げしてくれるのが、「corner」の新作「Macintosh」と「Lisa」なのだ。

 

“Comnerd” で、楽しくいこう。

 

Think Different. Think Comnerd. 時代は一周まわり、あの頃の「ダサい」は「お洒落」になったが、しかし変わらずいつの時代も、クレージーな私たちこそが世界を前進させていくのだから。

山田ルーナ - 文

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