オリンピック前のミラノ「MIDO 2026」レポート。階段をもう一段。Joy every timeが今見据える外の光
2026/03/10
逆風のミラノ「MIDO」にて
2026年2月、イタリア・ミラノ。世界最大のアイウェア見本市「MIDO」を控えた街は、例年とは異なる空気に包まれていた。
オリンピックの影響による宿泊費の異常な高騰、そして例年より前倒しされたスケジュール。混雑する電車、思うように進まない移動。それは出展者にとってもバイヤーたちにとっても、「追い風」とは言い難い状況だった。
しかし、そのような物理的な負荷が重なる中で、ブースに立つJoy every time広瀬氏の胸中には確かな手応えがあった。DIFFUSER(ディフューザー)をはじめとする今回の出展ブランドの名を知り、指名してやってくる人々がいたからだ。
派手な広告を打ったわけではない。SNSを通じて、あるいは口コミを通じて、海を越えた先で名前が独り歩きを始めている。ミラノの喧騒の中で、彼らはブランドが国境を越えて「根を張っている」ことを実感していた。
Joy every timeが描く「新しい三角形」
今年のミラノでのメガネ見本市「MIDO」において、彼らは大きな挑戦を試みていた。DIFFUSER、Mr.Gentleman Eyewear、そして初出展となるCORNER。性格の異なる3つのブランドを、同時に提示することだ。
海外見本市でもお馴染みのMr.Gentleman Eyewearは、整然と、洗練された美しさを放ち、いわばマスの市場にも届く完成された様式美を持っている。
一方で、初お披露目となったCORNERは、それとは対極に位置する。
「手の温度」を感じさせるクラフト感。あえて残された「クセ」や、エッジの効いたファッション性。それは効率化された現代のモノづくりに対する、一つのカウンターのような存在だ。
そして、その両者の間を繋ぐのが、頼れるアイウェアアクセサリーブランドDIFFUSERである。
コンサバティブとエッジ。洗練と野生。それらは年代で区切られるものではなく、どんな眼鏡をどう纏いたいかという個人の嗜好によって選ばれるべきものだ。
このミラノで初めて揃って提示する、この3ブランド。それは、世界中のあらゆる美意識に応えるための、彼らなりの布陣だった。
パリで歴史の重層に触れる旅も
実は今回ミラノ入りをする前、広瀬氏はパリにいた。DIFFUSERの商談のためだ。
昨秋のシルモ(SILMO)で出会った眼鏡店「COFFIGNON」での体験は、その中でも我々の指針を再確認させてくれるものだった。
そこは、1928年から続く歴史ある店を30代の若いオーナーが引き継ぎ、再出発させた場所。
ゼロから新しいものを作るよりも、積み上げられた歴史をリノベーションし、価値を継承していく。フランスには、そんな「時間の重なり」を尊ぶ文化が深く根付いている。
什器は昔のまま。その空間で、30代前半の職人が独学で水牛の角(ホーン)を削り、顧客の顔に合わせて絵型を描き、メガネを手作りしている。
「効率」という言葉を捨て、ただ「文化」を守るために手を動かす。その場所にDIFFUSERを置いたとき、どう見えるのか。それを確かめることは、ブランドの「味」を深めるための重要な儀式のようでもあった。
「コンフィオン」では、別注モデルの商談が最終局面を迎えている。2つの型で構成されるそのプロジェクトは、単なる輸出入の関係を超え、現地のニーズとDIFFUSERのクリエイティビティが融合する共同作業へと進化したといえるだろう。個人的には、国内でも人気のナイロン刺繍のアイウェアケースのオリジナルカラーが楽しみだ。
加速するグローバル・コネクション
展示会という場所は、残酷な場所でもある。それは時に、自らの商材が、世界という荒波の中で全く通用しないことを突きつけられる場でもあるからだ。
しかしその中で、Joy every timeは、確実に階段を登り続ける。
今回のミラノでも、また一段。高くその向こうに見えるのは、外の眩しい光である。
広瀬氏はミラノの熱狂を背に、すぐさま次なる目的地、アメリカへと飛んだ。LAやNY。そこで待つ有力な顧客たちとの信頼関係を深める旅を続ける。
実は、今はまだ詳細を明かせないプロジェクトがいくつも同時進行で動いている。アイウェアという枠を超えてファッションが好きな方にお楽しみいただける企画が目白押しなので、ぜひ続報を楽しみにお待ちいただきたい。
点と点だった繋がりは、今、水面下でより具体性を帯び、猛烈な勢いで線となって、やがて世界を包み込む大きな円を描こうとしている。
Joy every timeが、これからさらに世界が無視できない世界観を構築していく、その過程を、今年イタリア・ミラノで開催された「MIDO」でも見ることができた。
今後もグローバルに展開される活動から、目を離さないでいたい。
山田ルーナ - 文

