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corner 2026SS|新作「Toile」にみる「形」への昇華と、イタリア製新色「c11」が描く造形美

corner 2026SS|新作「Toile」にみる「形」への昇華と、イタリア製新色「c11」が描く造形美

2026/03/20

前回ご紹介したのは、ブランドの根幹である「Research(探究)」シリーズの現在地「Drap(ドラ)」。それは、フレンチヴィンテージの黎明期に潜む「揺らぎ」を未加工の布(シーチング)になぞらえて表現した、いわば原点の証明のようなモデルだった。そしてもう一つ、cornerには重要な側面がある。それが今回ご紹介する「Sublimation(昇華)」シリーズ。探究によって得られた純粋なエッセンスを、現代的視点によっていかにして昇華させるか。そのプロセスの結実として誕生したのが、今季のもう一つの主役「Toile(トワル)」である。

「布」から「形」へ。Toileという造形美

2026SSに「Sublimation」シリーズから登場する「Toile」。

 

この「Toile」というモデル名は、「形」という意味をもつ。ファッションの世界において、仮縫いの布(Drap)を経て、いよいよ具体的な服の形(Toile)へと成形された段階を指す言葉だ。

 

「Research」シリーズの「Drap」を、可能性を内包した「無垢な布」とするならば、「Toile」はその可能性を具体的な「形」へと解放したダイナミックな一本と言えるだろう。

「Toile」は「Drap」をベースとしながらも、そのバランスを徹底的に再構築したモデルだ。

 

レンズ径を広げ、ブリッジ幅を絞るという緻密な調整に加え、リムのノーズ側にはベースモデルにはない鋭角なエッジを付与。一見すると似ているが、もっとぎゅっとしているというか。手に取れば、その密度の高さをお分かりいただけると思う。

重厚さと洗練。面が語る、光と影の多重奏

今作の最大の特長は、やはりその圧倒的な立体感だろうか。

 

核となっているのは、7mmという厚みのある生地。この極厚材に贅沢に施されたカットにより、「Toile」は唯一無二の存在感を発揮する。

 

たとえばフロントの縁に施されているのは、大胆なファセット(面取り)カット。さらにレンズ周囲には、ヴィンテージの意匠を現代的に解釈したテレビジョンカットを組み合わせることで、フレームの中に奥行きという概念を持ち込んだ。

この多面的な造形を際立たせるのが、手磨きによって稜線を鋭利に守り抜く「ファインエッジ」だ。前作「Drap」と同じ技法を用いながら、厚みやカッティングが異なることで、その表情は驚くほど劇的に変化する。ヴィンテージを理解しきっているからこその、見事で鮮やかな昇華だ。

「Drap」が「線の精度」を追求したプロダクトであったのに対し、「Toile」は「面の対話」を追求したプロダクトだと言えるかもしれない。

 

職人の手仕事によって限界までエッジを立たせた多面的なカッティングは、周囲の光を複雑に反射し、あるいは深い陰影をその表面にたたえる。わずかに角度を変えるだけで、光のハイライトが艶やかな面の上を走り、フレームの表情を劇的に変化させるのだ。

 

それはもはや、視力を矯正するための道具という枠を超え、顔と合わさって完成する彫刻作品に近い。

 

7mmという厚みのある生地を用いながらも、決して野暮ったさを感じさせないのは、計算し尽くされたカッティングの角度と、磨き上げられたエッジの鋭さがあるから。重厚さと洗練。この相反する要素を一つのフレームの中に共存させることこそが、cornerにおける「昇華」の真髄である。

深淵なる色彩。イタリアから届いた「c11」の衝撃

そして、この「Toile」という肉体的な造形に魂を吹き込むのが、今季の新たな色彩だ。
ブランドは今回、世界最高峰の生地メーカーであるイタリア・マツケリー社から、特別な新色「c11」を取り寄せた。

この「c11」は、これまでの国内生地の常識を覆すほどの、異様なまでの「濃度」と「透明感」を併せ持っている。

 

それはどこか、いつか金沢21世紀美術館で観たアニッシュ・カプーアの作品を彷彿とさせる。コンクリートの壁面に現れた巨大な黒い楕円。目を凝らすほどに、それが平らな面なのか、あるいは穿たれた空洞なのか、その実態を捉えることが難しくなる。そしてその正体が、実は光を吸収する黒い顔料であるという事実。

 

「c11」もまた、一見すると光を一切通さないソリッドな黒の塊に見える。しかし、ひとたび光に透かせば、その「黒」だと思っていた物質の向こう側に、深い奥行きが現れるのだ。

 

それは、国内の生地メーカーでは決して再現できなかった、極めて高い彩度を保ったままの「暗さ」である。この色彩による次元の揺らぎは、cornerにとって新たな表現の武器となるだろう。

探究から昇華へ。そして「Ascend」の空へ

これまでcornerは、過去を解体する「Research」と、それを現代へ繋ぐ「Sublimation」という二軸でその精度を磨き続けてきた。しかし2026SS、ブランドはその体系をさらに拡張し、新シリーズ「Ascend(アセンド)」を始動させる。

 

「上昇」を意味するこのシリーズは、これまでの探究と昇華を掛け合わせ、さらに高次元な表現を目指す意思表明だ。その第一号モデルとしてリリースされるのが、「Coat(コート)」である。

 

この「Coat」誕生の背景には、ブランドとしての一つの進化の系譜がある。

 

かつてcornerには、フレンチヴィンテージの重厚な毒気を表現した「Research」モデル「Manteau(マントー)」があり、それを軽快に脱ぎ捨てる春をイメージして昇華させた「Sublimation」モデル「Printemps(プランタン)」があった。今回の「Coat」は、実のところこれまでにご紹介した「Drap」と「Toile」の系譜ではなく、この両者のDNAを継いだモデルとなっている。……「Manteau」と「Printemps」という名を引き継ぐならば、ヴィンテージ特有のバランスと現代的な実用性をマッシュアップし、さらなる高みへと引き上げた、究極の「Coat(アウターとしてのコート)」なのだ。

 

さらに「Coat」には、コンクリート建造物から着想を得た「リファインエッジ」という新機軸が投入されている。

 

磨き上げたあと、あえて専用ルーターで天面のみを再度削り出す。そこに生まれる鋭利な刃跡は、これまでの「ファインエッジ」とは異なる、無機質で圧倒的なシャープネスを放つ。

 

この新シリーズ、そして新モデルの詳細は、また次回の記事を楽しみにしていただきたい。

 

「Research」によって土台を固め、「Sublimation」によって形を成し、そして「Ascend」によって未知の次元へと跳躍するcorner 2026SS。一本一本の違いと、それぞれのこだわりを、今季からはより贅沢に味わえそうだ。

山田ルーナ - 文

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