NYで描く、DIFFUSER / Mr.Gentleman EYEWEARの今。そして私たちのこれから。
2024/01/20
アイウェアアクセサリーブランド「DIFFUSER」そしてラグジュアリーアイウェアブランド「Mr.Gentleman EYEWEAR」の2023AWカタログが、それぞれかなりカッコいい。聞くところによると全カット秋のNYで撮影したのだそうだ。そこで今回の記事では、その撮影裏にフィーチャー。DIFFUSER広瀬氏が撮影したスナップ写真、そしてNYの撮影チームによる素晴らしいルックとともに、各ブランドの今をお届けしたい。
芯の所在を教えてくれる、Mr.Gentleman EYEWEAR
Mr.Gentleman EYEWEARのルックは、ブルックリンの南の外れにあるフォトスタジオで撮影された。光と陰のコントラストが印象的なそのスタジオでカメラを向けられるのは、ブロンドの女性モデルと髭を蓄えた男性モデルの二人だ。
Mr.Gentleman EYEWEARの2023AWは、際立った特徴のないものが多かった。もちろんそれは意図されたもので、言い換えれば本質を内包した静けさであり、謙虚な美しさであるわけだが、それらを写真で伝えることは中々難しいと思う。
しかし出来上がったルックを見ると、その写真の中で、Mr.Gentleman EYEWEARのアイウェアは実にMr.Gentleman EYEWEARらしい魅力を発揮させている。デザインのずっと内部にある芯の強さが、捉えられているような気がする。
それはおそらく、モデルやロケーションの個性が、Mr.Gentleman EYEWEARの世界観とうまく引き立て合っているからではないだろうか。一癖ある人物や場所は、一見Mr.Gentleman EYEWEARの良い意味で無味無臭なシンプルさとは対極にあるようだが、だからこそアイウェアの端正な美しさを引き立たせてもいる。
今回の撮影を担当したチームとMr.Gentleman EYEWEARはこれまでも何度もタッグを組んできているが、ブランドを熟知しているからこその表現でもあるのかもしれない。
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秋のニューヨークより。Joy every time Inc. - 2022AWルック撮影
そしてこのスタイリング感覚は、ルックに限らず日常生活にも取り入れることができるように思う。
Mr.Gentleman EYEWEARのアイウェアは、いわゆるラグジュアリーアイウェアだ。端正なデザインで品質が良く、価格帯も安くない。けれどもスタイリングとしては、いかにも綺麗なアイテムに合わせるのではなく、むしろ意外性をもって取り入れた方が素敵だ。まさにこのルックのように、オンとオフの間にいるような雰囲気で。緊張とリラックスを同時に抱いて、大人の余裕を表現してみるのはいかがだろうか。
余談だが、Mr.Gentleman EYEWEARデザイナー高根氏は、今回の女性モデルのアイウェア姿をブランドイメージとして大変気に入ったそうだ。人を褒めるとき「可愛い」や「かっこいい」といった言葉をよく使うが、そのどちらともつかない絶妙なニュアンス。女性的とも男性的とも呼べない人としての成熟した魅力を、彼女は持っている。そのような人物がかけるアイウェアが、デザイナーが描くMr.Gentleman EYEWEARのイメージでもあるのだろう。レンズの先の瞳に、静かな意思が宿っている。Mr.Gentleman EYEWEARのアイウェアはきっと、それだけで完結するデザインではなく、かける人も含めて完成されるプロダクトなのだ。
だからこそMr.Gentleman EYEWEARは、ラフに身につけた時にも、いやそのような時にこそ、自分の芯の所在を教えてくれるアイウェアなのだろうと、カタログを見ていて思った。何を着ているとか、男性だとか女性だとかは、関係ない。どのような人間かということが、深部から引き出されるようなアイウェア。あるいはどのような人間で在りたいかということを、思い出させてくれるようなアイウェアなのだ。
撮影は昼から夕方まで続き、最後は廃倉庫と赤いスポーツカーを前にしたロケーション撮影だった。夕日が差し込んだ様子は、懐かしさとともに、あの頃心に抱いた憧れを想起させる。「憧れを生み出すもの」というMr.Gentleman EYEWEARのブランドコンセプトを、かすかに思い出させるようなルックに仕上がっていると言えるのではないだろうか。
日常の端を彩る、DIFFUSER
一方DIFFUSERは、ウィリアムズバーグのスタジオで撮影を行った。
ブルックリン北側に位置するこのエリアは、NYの中でもお洒落なスポットとして知られている。もとは工業地帯で、金銭的にマンハッタンに住めなかったアーティストがこぞって選んだ街だったのだが、だからこそ質の高いカルチャーが生まれ、今やヒップスターの本場。つまり流行の最先端だ。2000年頃から再開発が進み、今やマンハッタンよりも高いほどなのだそう。
そんなウィリアムズバーグの撮影スタジオは、広瀬氏曰くアパートっぽい雰囲気。確かに味があるというか、端々に暮らしを感じる。それもかなり感度の高い洒落た暮らしだ。梯子をのぼると、そこにはブルックリンを見渡せるルーフトップが。憧れずにはいられないライフスタイルがそこにはあった。
DIFFUSERが、そんなライフスタイルによく似合っている。ものすごく自然に、暮らしを描く色彩の一端を担っている。
「思うにDIFFUSERは、今やアイウェアアクセサリーという枠を超え、まるで家具のように、私たちの暮らしといつも共にあるような存在なのではないだろうか。私たちが高くても良いデザインや質の家具を買いたいと思うのは、そこで過ごす時間をより豊かなものにしたいからだ。例えば素敵な照明は、毎日眺めるものではないが、いつだって視界の端で、あなたの日常を彩ってくれる。
DIFFUSERもそれと同じように、日常の端を彩ってくれるはずだ。たとえ日常的にアイウェアを使う人でなくても、つまり直接的にそのアイテムに関与せずとも、部屋に置いておくだけで暮らしが少し豊かになるようなアイテム。
DIFFUSER自身もやはりそのような用途を望んでいるようで、2023AWではミラートレーなど、より生活空間に馴染む提案も多かった。今回のルックではそのようなブランドのビジョンが、うまく表現されているような気がする。
ちなみにDIFFUSERの撮影はいつも「男女の愛」をテーマにしている。今回も、部屋でリラックスしつつ仲睦まじく暮らす二人の姿が印象的だ。二人ともグラスコードをスタイリングに落とし込み、自由にファッションを楽しんでいる。
流行の最先端にいる人は、すでにこういう生活をしているのかもしれない……そんなことを思わせる説得力が、今回のルックにはある。インテリアもファッションも常識にとらわれず、良いと思うものを自由に取り入れる。愛する人と暮らしを楽しみ、心躍るものを身につける。それこそが、きっとこれから当たり前になってくるライフスタイルなのだ。
2つのブランドの今期のルックは、それぞれ私たちに、在りたい姿や理想の生活を考えさせてくれるようなものだった。Mr.Gentleman EYEWEARのアイウェアやDIFFUSERのアイウェアアクセサリーを実際に生活に取り入れたら、どのような変化が起こるだろう。写真のモデルたちに自分の姿を重ね、そこに広がるまだ見ぬ世界を想う。楽しい妄想が、止まらない。
山田ルーナ - 文