DIFFUSERグラスコード|「染め」と「リネン」で表現する「ヴィンテージ」な佇まい。
2022/06/10
昨年秋、こちらのFEATUREにて、『GRADATION DYEING GLASS CODE』というグラスコードをご紹介した。日本の伝統技法「かすり染め」による、美しく鮮やかなグラデーションのグラスコード。京都の熟練の染め職人が、繊細な工程を手作業で行なっている。
▶︎FEATURE記事(2021.11.15)「DIFFUSER新作、伝統技法「かすり染め」によるグラデーションのグラスコード」
今回ご紹介するのは、この熟練の染め職人とアイウェアアクセサリーブランド〈DIFFUSER(ディフューザー)〉が新たに手がけたグラスコード『VINTAGE DYING LINEN GLASS CODE 』。同じ職人が携わっていながら前回のアイテムとは趣の異なるこの染めのグラスコードには、より深く、より熱い、作り手たちの様々な想いが詰まっていた。
今度の染めは、美しくなくていい
先にご紹介した前回の染めのグラスコード『GRADATION DYEING GLASS CODE』をご覧いただいた方は、その佇まいにきっと、美しさを感じたはずだ。
自分の記事から引用するのもあれだが、筆者はこの染めによるグラデーションについて、このように表現した。
グラデーションが、ほんとうに柔らかくて、優しい。
それはあるいは、陽が落ちる直前の空の赤、届かないほど深くなっていく海の青、車窓の山の木々の緑・・・
この一節のように、『GRADATION DYEING GLASS CODE』の赤や青、緑のグラデーションには、自然が作る色の移ろいに通ずるような、完璧な美しさがあった。
そんな美しさを踏まえて、ここからの話を進めたい。
今回もう一度染めのグラスコードを作ることになった理由は、〈DIFFUSER(ディフューザー)〉のデザイナー広瀬雅規氏の、ある熱い想いにある。
以前から、ヴィンテージデニムなどがもつ独特の雰囲気に憧れを抱いていた広瀬氏。多くのオリジナルコードを作る中で、その気持ちは褪せるどころか、増す一方だった。
しかし、ヴィンテージの雰囲気を表現するというのは、なかなか難しい。ヴィンテージらしさというのはつまり、時を経て初めて得ることができる味であり、具体的に言えば、傷や色褪せなどによるものだからだ。
例えばグラスコードで傷を表現しようとして、実際に繊維を傷めるようなコードをしてしまうと、耐久性が下がり、紐が切れてしまうかもしれない。大切なアイウェアのためのアイウェアアクセサリーにとって、それはあってはならないこと。
そこで思いついたのが、染めの技術を用いてヴィンテージの雰囲気を出すという方法だった。
色を入れ込むことで、逆に色褪せや傷を表現する。そうすれば耐久性はそのままに、ヴィンテージの雰囲気を楽しむことができるかもしれない。
しかしそのためには、染めについてのより深い知識とより高い技術が必要である。
そこで広瀬氏は、美しいグラデーションのグラスコードを作った京都の職人に、今度は「美しくなくていい」という注文で、染めを依頼することにしたのだ。
ちょっと無茶な注文
本来美しいものであるはずの、染めという伝統技法。
「美しくなくていい」というのは、ちょっと無茶な注文である。
特にこの京都の職人は、帯締めや組み紐など、和装に使うような色鮮やかな繊維を染めることが本業であり、美しくなく…あえて言うなれば「汚く」染めるというのは、全く例のないことだった。
職人は頭を抱えた。それもそうだ。自らの技術を以ってして普通にやったら、どうしたって美しくなってしまう染め。これを、汚くしてほしいのだというのだから。
少し話は逸れるが、サン=サーンスの『動物の謝肉祭』という2台ピアノの組曲に、〈ピアニスト〉という曲がある。この曲には演奏注記として「初心者の下手な演奏を真似するように」と書かれており、ピアニスト達にとっては、かえって難しい曲となっている。どうしたって下手には弾けないピアニストが、下手というユーモアを、その技術を以って、音楽として表現しなくてはいけないのだ。
「汚く」染めることを依頼された職人のことを想像して、この曲のことをつい思い出した。
本当に下手な染めを求められているわけではないというところが、この曲に似ている。ヴィンテージの雰囲気を実現するための、上手に染めていない風の表現は、実は高い技術と、センスを要するのだ。
…これはやはり、一筋縄ではいかなかった(一本の紐の話ではあるのだけど)。
何度も試作を重ね、やっと辿り着いた究極の表現。
それが、『VINTAGE DYING LINEN GLASS CODE 』なのである。
リネンもレザーも。本物のヴィンテージへ
また、前述の表現をするにあたり、土台となる紐の素材には、きちんとこだわる必要があった。
最終的に決まったのは、もともと〈DIFFUSER(ディフューザー)〉が作って持っていたリネンの紐。
複数の色が混ざったベージュ系のリネンを八の字に縛り、いくつかの染料を振りかけることで、ヴィンテージのような風合いが実現した。
リネンは昔から高級寝具や衣料にも使われていて、肌触りの良さと優れた機能性、また使い込むほどになめらかになっていくというエイジングの特徴をもつ。
頬や首に触れた時の心地よさを楽しみつつ、『VINTAGE DYING LINEN GLASS CODE 』が本当にヴィンテージになっていく過程を、是非味わっていただきたい。
〈DIFFUSER(ディフューザー)〉お馴染みの、ブランドロゴがプリントされたタグにも触れておきたい。
これは他のグラスコード同様、バックスタイルもお洒落に楽しむための仕様である。素材は、イタリアのレザー。元からエイジングしたような雰囲気があるが、使い込むほどに革の油分が出てきてより黒っぽくなり、質感も変化するだろう。リネン同様、ヴィンテージらしくなっていく佇まいを、じっくり楽しめそうだ。
「あなただけの一本」を
広瀬氏の憧れを注ぎ込み、職人が頭を悩ませ、念願叶って完成した『VINTAGE DYING LINEN GLASS CODE 』。
カラーは、こちらの6色展開だ。
「Brown & Dark Brown Leather」
「Denim & Dark Brown Leather」
「Purple & Dark Brown Leather」
「Dark Navy & Orange Leather」
「Green & Orange Leather」
「Beige & Orange Leather」
このどれもで、ヴィンテージらしい風合いを楽しむことができる。
ヴィンテージデニムのような「Denim & Dark Brown Leather」をはじめ、ミリタリーっぽい「Green & Orange Leather」、タイダイ風の「Beige & Orange Leather」もかわいい。
手作業による染めのため、規則性がなく、同じものは一つとして存在しない。
あなたの手元にきたものは文字通り「あなただけの一本」になるだろう。
余談だが今回のグラスコード、筆者も是非買おうと思っている。
クラシカルタイプのメガネをはじめ、アイウェアに合わせることも楽しみだが、むしろお洋服との相性にも期待したい。デニムに、ミリタリーにと、想像が膨らむ。
日本の伝統技法「染め」と「リネン」で表現した「ヴィンテージ」な佇まい。
メガネライフにおけるファッションが、さらに味わい深いものになる気がしている。
>> VINTAGE DYING LINEN GLASS COD(DIFFUSER ONLINE STORE)
山田ルーナ - 文