日本の眼鏡産業という誇り。ミスタージェントルマンアイウェアの最高のアセテートフレーム
2021/03/22
前回の記事「憧れを、今。ミスタージェントルマンアイウェアの新作シリーズ」でご紹介した、ミスタージェントルマンアイウェア(Mr.Gentleman EYEWEAR)が展開する 新作4モデル。執筆中、各型4色ずつ計16本のメガネを手に取り、その絶妙な発色や質感へのこだわりに、筆者は感動した。
これらのメガネは、アセテートフレームと呼ばれるプラスチック製のフレームだ。 ミスタージェントルマンアイウェアのアセテートフレームのメガネは、この新作も含めて、福井県鯖江市の工房で作られている。せっかくなので、今回は前回の関連として、このアセテートフレームの製造背景についてお伝えしたい。
メガネフレームの素材と、製造背景
いざメガネフレームを選ぶとき、気になるポイントってなんだろう。デザイン?色?かけ心地?それらはきっと、人によってさまざまだと思う。しかし昨今、メガネは実に多種多様で、表面的なポイントを決めていても、選ぶのはとても難しくなってきた。たとえばかけ心地を優先して選ぶと、デザインは妥協しなきゃいけなかったり。色の綺麗さに惹かれて選ぶと、かけ心地や耐久性がよくなかったり。そんなわけで、バランスよく満足できるメガネに出会うことができる可能性は、意外と低い。
そこで今回筆者がおすすめしたいのは、デザインや色、かけ心地はさておき、素材と製造背景に着目して選んでみるということ。
素材と製造背景を知ることこそ、デザイン、色、かけ心地という、本来こだわりたいこと全てを兼ね備えたメガネに出会う、最大の近道だと思うのだ。
世の中のメガネフレームには、いくつかの主な素材がある。メタル素材、プラスチック素材、そして樹脂素材と天然素材だ。その中で私たちが触れることが多いのが、チタンフレームなどのメタル素材と、アセテートフレームなどのプラスチック素材である。(このコンビフレームもよく見かける)
今回の記事で取り上げるのは、プラスチック素材のアセテートフレーム。
アセテートフレームといっても多々あるが、ミスタージェントルマンアイウェアの佇まいは、世の中のそれの中でも別格だ。デザインを引き立てる端正で丁寧な作り、素材を生かした艶と質感、そして何より、抜群のかけ心地。・・・リピーター率の高いブランドだが、一度触れてみれば、その理由をお分かりいただけるだろう。
ミスタージェントルマンアイウェアは、国内外から取り寄せる最高級のアセテートシートを使って、最高の工房で製造することにより、そのクオリティを実現している。
この記事では、特に製造背景について記載しよう。
ミスタージェントルマンアイウェアのメガネは、メイドインジャパン。製造元は、日本が誇る眼鏡産業地帯、福井県鯖江市だ。
福井県鯖江市の谷口眼鏡
ミスタージェントルマンアイウェアのメガネは全て鯖江製だが、デザイナーの高根(こうね)氏は、その素材によって、それぞれ最も合った工房を選択している。
その中から今回ご紹介したいのは、ミスタージェントルマンアイウェアのアセテートフレームを手がける工房のひとつ。福井県鯖江市の河和田地区にある、谷口眼鏡(たにぐちがんきょう)だ。
谷口眼鏡は、1957年創業の老舗工房。60年以上の歴史をもち、メガネの聖地ともいうべき鯖江市の中でも多くのデザイナーに信頼を寄せられる、セルロイド・アセテートフレームのスペシャリストである。
彼らの公式ウェブサイトとYouTubeに、是非一度目を通してみてほしい。
老舗というイメージを覆すような、コンテンツのおしゃれな雰囲気に驚いたのは、筆者だけではないはずだ。そして、職人の方々が、想像よりずっと若い。
彼らは、日本の眼鏡産業の中心地に工房を構え、60年以上伝統を守りつつ、業界を発展させてきた。歴史に縛られるのではなく、歴史を尊重した上で、新しい時代を見据える姿勢。常に現代の人々の使う様子を思い浮かべながらつくってきたからこそ、それらは決して古くなく、むしろ常に、新しい感覚を与えてくれる。そして、その時々の人々が、この素晴らしいメガネに憧れ、使い続けるからこそ、また次の世代の職人が生まれるのだろう。
これは、ミスタージェントルマンアイウェアのデザインの姿勢にも近いものがあるかもしれない。 スタンダードのちょっと隣にいるような、安心感と、新しさ。デザイナー高根氏の「憧れを生み出す物」というコンセプトに、谷口眼鏡が…福井県鯖江市という歴史ある産業地帯が 大切にしていることが、とてもよくマッチしているように感じる。
ミスタージェントルマンアイウェアは、このような姿勢に共感し、アセテートフレームの製造の一部を、この工房に委託しているのだ。
「よりそう、めがね」というコーポレートメッセージ
谷口眼鏡の動画で、代表谷口康彦氏の「お客様の意識の隣に座る」という言葉に、筆者は感銘を受けた。一緒に感動ができるようなものづくりを、という職人の姿勢を、とても美しく感じる。
谷口眼鏡は、「よりそう、めがね」というフレーズを、2017年の創業60周年にコーポレートメッセージとして掲げている。
「よりそう」というのには、3つ意味がある。
まずは、「寄り添う」。グローバルな時代だからこそ、気持ちは、手をつなぐくらいの距離で。使い手の顔や気持ち、暮らしを思い浮かべながらものづくりをするという考えは、谷口氏の「お客様の意識の隣に座る」という言葉そのままかもしれない。
次に、「より添う」。これには、デザイナー、作り手、使い手みんなで、一緒に良いメガネをつくっていきたいという気持ちが込められている。ミスタージェントルマンアイウェアのメガネを手に取ると、谷口眼鏡の職人が、デザイナーと近い距離で、高い理想のもと良いメガネを目指しているのだと感じられるだろう。
最後は「より沿う」。これは物理的なかけ心地を意味する。シンプルに、丁寧にものづくりを続けている谷口眼鏡だからこそ叶う、唯一無二の着用感。ミスタージェントルマンアイウェアのメガネもまた、見た目のおしゃれさだけではなく、かけ心地に定評があるが、これは職人によるところが大きい。
谷口眼鏡について色々と知る中で、彼ら職人のことを、職人気質というよりむしろ、とてもロマンチックな存在に感じた。職人気質というと、頑固で実直というイメージが大きいからだ。しかし本来、理想を追い求め夢を見続け、確かな技術のもと流動的であることこそ、職人気質というべき真の姿なのかもしれない。
ミスタージェントルマンアイウェアがアセテートフレームをつくり続ける限り、この歴史ある産地と「よりそう」関係は、きっと続くだろう。
以上、ミスタージェントルマンアイウェアの製造背景について、今回は谷口眼鏡にフォーカスしてご紹介したが、日本の眼鏡産業は本当に素晴らしいものだと 筆者は改めて感じた。
歴史と誇りがあり、そして、未来がある。
MADE IN JAPAN. ミスタージェントルマンのアセテートフレームの、端正な佇まい、色合いの奥ゆかしさ、そして控えめで美しい艶は、日本が誇る素晴らしい職人技術の結晶なのだ。そしてそれこそが、日本のみならず海外にも人気が高い、大きな理由かもしれない。
山田ルーナ - 文