ため息が出るほど美しい至高のアイウェア、AKONI 2024SS
2024/04/10
素晴らしいものを手に取った時の、ため息が出るような感覚。その対象は様々で、端正なオブジェだったり、綺麗な装丁の本だったり、あるいは自然の花のかたちそのものだったりするが、そのため息は共通して、美しさに対するどうしようもない高揚感を孕んでいるように思う。
今回フィーチャーするのは、手に取ればため息をつかずにはいられない〈AKONI〉のアイウェアだ。2024SSに発表された注目の新作3型をピックアップし、ため息の出るポイントに着目してご紹介したい。
AKONIが描く隙のない美
2020年にスタートした〈AKONI〉は、〈DITA〉の創業者二人がデザイナーを務めるスイス発のアイウェアブランドだ。海外のブランドだが、製造は日本。日本の職人の熟練した技術のもと、細部にまで美を宿す。
ブランドについては是非こちらの記事もご一読いただきたい。
▶︎AKONIという逸品 - 全てを超えて受け継がれていくもの
〈AKONI〉の美には、隙がない。プロダクトでありながら、つまり人の手によって作られたものでありながら、まるで今そのままの姿で生まれ出たように完璧なのだ。粗を探そうとまじまじと見ても、見つからない。塗りの端、彫りの角度、どれをとっても、ただ美しいのである。
かの彫刻家ミケランジェロは自身の制作について「大理石の塊の中にあらかじめ内包されている像を取り出す」と表現したそうだ。彼が彫って形作るのではなく、彫ることで埋まっていた天使を自由にできるのだと。
〈AKONI〉のプロダクトは、そういう感覚に近いものがあるような気がする。そうであることが決まっていたように完璧な姿形で存在している。だからそのアイウェアを手に取ると、どうしようもなく高まってしまうのだ。うっとりとため息の出るような出会い。それは、普段のショッピングで体験できるときめきとは全く質感が異なる。
さて、2024SSにおいてキーとなるのは「COSMO」「JUNO」「SKYRACER」の3型。各モデル、サングラスとメガネとで展開されている。写真を眺めているだけでも、その美しさを楽しんでいただけるはずだ。
「COSMO」重厚感と繊細さの対比が織りなすエレガンス
映画『華麗なるギャツビー(2013)』をご覧になったことがあるだろうか。F・スコット・フィッツジェラルドの小説「グレート・ギャツビー」を基にした映画で、主演はレオナルド・ディカプリオ。大富豪ギャッツビーの満たされぬ愛と孤独を好演していた。
パーティシーンの描写が鮮やかに思い出される。人々の笑い声、グラスの鳴る音、音楽。そしてそんな狂騒を魅惑的に浮かび上がらせる幾多の光。光を反射する煌びやかなアクセサリーやドレスと、それと対比するような漆黒のスーツが、作品の光と闇をそのまま描いているようで美しい。
実は今作「COSMO」は、『華麗なるギャツビー』のもつ煌びやかさをデザインのインスピレーションとしたモデルだそうだ。具体的にはディカプリオが劇中で纏ったアクセサリーなどにインスパイアされている。
テンプルの中の芯金が透けて見えるのは「COSMO」の特徴の一つだ。圧倒的な重厚感の中に、わずかな繊細さが見え隠れするデザイン。また、ただ芯金を透かして見せているだけでなく、芯金そのもののデザインも珍しい。特に細い枠線で描かれるテンプルエンドは、強さと儚さを同時に感じさせるようで見事だ。
もう一つの特徴として、テレビジョンカットにも触れておきたい。レンズに向かって丸みが出るように入った立体的で滑らかなカットは、日本の職人による技術の賜物。ずっと触れていたくなるほど、引っ掛かりのない完璧な曲線が作られている。
昨今世界的に厚みのあるデザインが流行っているが、その中でも一線を画すモデルだと思う。重厚感がありつつもエレガント。所有欲も十分に満たされる一本だろう。
「JUNO」デザイナーズ照明を想起させる完璧な構造
「JUNO」もまた面白いデザインだ。最高峰の技術とセンスを持つ〈AKONI〉だからこそできる、無駄を削ぎ落としたデザインと言えるだろう。
まずはメガネのモデル「JUNO-ONE」。ご覧のとおりレンズに直接穴を開け、金具を取り付けている。つまり、リムなし。レンズ自体を直接ブリッジとテンプルに繋げているのだ。
昔年配の方がかけていたデザインに似ているようにも思えるが、実際にかけてみるとそれとは似て非なるもの。陳腐な表現だがとても洒落ているし、むしろトレンドを感じる。それはこの造形美だけでなく、〈AKONI〉ならではの配色センスなども影響しているのだと思う。
例えば、テンプルの先だけ色を入れたり、シルバーでまとめているかと思いきやゴールドをささやかなアクセントとして添えていたり。レンズの側面にだけエナメルで色がついているものもある。細部までの徹底した美意識が、この佇まいを実現させているのだろう。
サングラスモデル「JUNO-TWO」は構造こそ同じだが、リムの部分がインジェクションで付けられているのが特徴的。ブリッジとテンプルがリムに取り付けられているわけではないので必要なパーツではないのだが、確かにこの枠線があるだけで目元が引き締まる。
優れたデザイナーズ照明を眺めるとき、構造に惚れ惚れすることがあるが、「JUNO」はそれに似た感動を与えてくれる。むしろハンドメイドであるという点で、その感動の大きさは「JUNO」の方に軍牌が上がるのかもしれない。そこにあるだけで絶対的に美しい、そんなモデルだ。
「SKYRACER」360度美しい彫刻作品のような
「SKYRACER」はツーブリッジのアイウェア。〈AKONI〉の人気モデル「ERIS」と同じシリーズで、サイドから見たときのシールドのようなデザインが特徴的だ。
素晴らしい音楽がそうであるように、美しいものは決まって完璧な緩急を持っているように思う。この「SKYRACER」も然り。重さと軽やかさ、威圧的な部分と繊細な箇所、そして硬さと柔らかさ、その全てのバランスと移ろいが完璧で、だからこそ360度どこを切り取っても見ていて飽きることがない。
個人的に驚いたのがこちらのカラー。シールドとツインブリッジの部分がグリーン系のカラーなのだが、写真でご覧いただけるだろうか。本当に微妙な色の差なので、その色設定へのこだわりにも驚くが、最も驚くべきポイントはこの箇所がエナメルの手塗りであることだ。
かかっている工程数、そして費用。〈AKONI〉が誰も追いつけない境地にいることが想像できる。それゆえ単価も高くはなるが、しかしその金額に十分見合う満足を与えてくれるだろう。
新型3型をレビューしつつ、私もまた所有欲に駆られている。手に取ったときのため息が出るほどの高揚感を、是非とも〈AKONI〉2024SSを通じて味わってほしい。
山田ルーナ - 文