氷点下のNYから、32℃のLAまで。世界の街角に溶け込むDIFFUSERのポテンシャル
2026/04/20
ミラノでの確信を携え、DIFFUSERが次なる舞台として選んだのはアメリカだった。氷点下のニューヨークと真夏の西海岸という、あまりにも対照的な2つのアメリカを巡った2週間。現地での撮影と展示会、そして各都市のキーマンを訪ねた充実の歩みを、ここに少しだけご紹介しよう。
ノーホーで描くDIFFUSERのある日常
ニューヨークに降り立った広瀬氏を待っていたのは、肌を刺すような気温-4℃の極寒だった。吐く息も白く凍る中、今回撮影の舞台としてこだわったのは、マンハッタンに隣接するノーホーエリアだ。
かつては工業地帯でありながら、現在は代官山を思わせる洗練された静謐さが漂うこの街。赤煉瓦の建物と石畳が続く街並みの一角にある、実際に人が暮らしているアパートメントの一室を借り切って、新シーズンのルック撮影を敢行した。
そこは、スタジオにありがちな無機質で作り込まれた空間ではない。誰かの生活の匂いや住人の歴史が染み付いた、生きた場所。そんなリアリティのある空間に、ウクライナ出身のモデルを迎え、いつもの気心が知れたチームとともに、DIFFUSERの新しい世界観をレンズに収めていく。
柔らかな自然光が窓から差し込み、ヴィンテージの家具や壁の質感がプロダクトと重なる。今シーズンのDIFFUSERは、過去の作品を再解釈しアップデートさせたモデルも多い。時を吸い込んだこの空間は、今のDIFFUSERが提案する、時を経たからこその表現と、見事に調和したと言えるだろう。
このノーホーという場所が持つ、歴史と現代が交差する独特の空気感。それこそが、今回のルックを完成させる最後のピースとなったのかもしれない。
ブルックリンに息づくフランスの美学
撮影の合間を縫って広瀬氏が足を運んだのは、ブルックリンのウィリアムズバーグ。かつては若きアーティストたちの溜まり場であり、現在は再開発によってハイブランドのポップアップも行われるようになった、東京で言えば中目黒のような熱気と変化を内包するエリアだ。
目的は、この場所を拠点とするアイウェアストア「アトリエ・ミラ(Atelier Mira)」。
この店のオーナー夫妻は、フランスの名門アイウェアブランド「アン・バレンタイン」の家系を継ぐ、筋金入りの美学の持ち主である。店内には象徴的な「アン・バレンタイン・ブルー」が随所に配され、ニューヨークのど真ん中にいながらにして、フランスの凛とした空気感を感じさせる。単なるアイウェアショップではなく、一つの完成されたアートギャラリーのような品格を漂わせていると言ってもいいかもしれない。
そして驚くべきは、その極めて高い審美眼で選りすぐられた空間に、DIFFUSERのプロダクトがまるであつらえたかのように馴染んでいたことだ。
海を越えた先にある鋭い感性と、日本で実直にデザインを磨き上げてきたDIFFUSERが、言葉を超えて共鳴する。その光景は、ブランドが進むべき道への確かな「答え合わせ」となり、次なるクリエイションへの強烈な刺激となった。
若き展示会「EYECON SHOW」で見つけた、新しい対話の形
またニューヨーク滞在中は、立ち上げからまだ2年という新進気鋭の展示会「EYECON SHOW」にも参加した。
ここは画一的な大規模イベントとは異なり、いま本当に面白いもの、価値のあるものを求める、感度の高いバイヤーだけが集まる場所だ。それは古いしきたりも多いアイウェア業界において、既存の枠組みに捉われない、新しい熱源とでも言おうか。
広瀬氏はここで、パンデミック以降しばらくやり取りが途絶えていたかつての顧客たちと、思いがけない再会を果たすこととなった。
画面越しのメールやカタログの送付だけでは決して得られない、対面だからこそ生まれる熱量、そして確かな信頼関係。数年ぶりの握手とともに交わされる会話の中で、世界が再び力強く動き出し、新しいプロジェクトの種が次々と芽吹いていくのを肌で感じる。それは、デジタル化が進む現代において、あえて現地に足を運ぶことの意味を再確認するエネルギッシュな時間となった。
32℃の熱波。ビバリーヒルズでの「ライブ」な挑戦
そしてニューヨークから一転、西海岸へ辿り着いたロサンゼルスは、雲一つない青空が広がる32℃の夏日だった。冬から夏へ、30度以上の気温差を数時間で飛び越える過酷なスケジュール。しかし、その暑さこそが、LAのエネルギーそのものだ。
西海岸の強い日差しを浴びて、DIFFUSERのプロダクトが放つ輝きが現地のユーザーを魅了していく。ニューヨークの凍てつく石畳から、ロサンゼルスの乾燥した風が吹く山の上へ。この極端な環境の変化は、そのままDIFFUSERというブランドが、いかなる気候や文化圏、ライフスタイルにも溶け込み、その場所の一部になれるポテンシャルを持っていることの証明でもあった。
世界を、もっと身近に
氷点下の街角から、陽光降り注ぐ西海岸まで。今回の2週間にわたるアメリカ行脚で広瀬氏が確信したのは、プロダクトが国境や文化を軽やかに飛び越え、それぞれの街の景色に溶け込み始めているという確かな手応えだ。
「世界で頑張っています」と肩をそびやかすのではなく、世界のどこにいても、その土地の人々に愛される「最高にクールな道具」であること。アメリカ各地で掴んだ新しいインスピレーション、そして「アトリエ・ミラ」のような有力店との深いコネクションを胸に、DIFFUSERの旅はここからさらに加速していく。世界はまだ広く、そしてそのすべてが、DIFFUSERのステージになるはずだ。
山田ルーナ - 文

