「今」を流れる。ミスタージェントルマンアイウェア デザイナー 高根俊之氏 インタビュー 後編

「今」を流れる。ミスタージェントルマンアイウェア デザイナー 高根俊之氏 インタビュー 後編

2021/10/11

2012年にスタートした日本のアイウェアブランド、ミスタージェントルマンアイウェア(Mr.Gentleman EYEWEAR)は、広島県のオプティカルストア〈SENSE〉のオーナー高根俊之(こうね・としゆき)氏による日本のアイウェアブランド。眼鏡屋のオーナー自らデザインを手掛けることで始まったブランドだが、一流ブランドに比肩するクオリティで、国内外問わず人気を集め続けている。コンセプトは『憧れを生み出す物』。展開されるメガネやサングラスのデザインは、高根氏が幼少期から影響を受けてきたミュージシャンや俳優、映画、音楽などにインスパイアされており、時代に左右されない多様なアイテムが揃う。

2回目となる本インタビュー。(前回の記事はこちら
今回はデザイナー高根氏へのプライベートな質問をとおして、その人間性や日ごろ持っている考えから、ブランドの魅力を掘り下げてみたい。

やっぱり人に、興味がある

- ミュージシャンや俳優、映画、音楽などが好きで、影響を受けてきたという高根さん。それらへの『憧れ』はデザインにも生かされていますが、特に ご自身もバンドを組んでいたほどお好きだったという音楽について聞かせてください。

特定のミュージシャンにどっぷりハマったということはないのですが、世代的にもニルヴァーナや尾崎豊はよく聴きました。ただ、実は彼らの生前に、熱心に聴いていたわけではなく、魅力を強く感じるようになったのはむしろ亡くなったあと。生き方のようなものを振り返って、カッコいいなと思ったんです。

 

- ニルヴァーナのカート・コバーンも、尾崎豊も、若くして亡くなっていますよね。

衝撃でした。才能があるのに、成功していたのに どうしてだろうという疑問から、音楽を聴き直したように思います。私はやっぱり、人に興味があるんです。いくら完璧に見えても弱さを持ち合わせている、その両面性に、人間らしい魅力を感じます。そして、その時その時を生きた証のような…彼らの「今」が残っているように感じられるから、音楽も好きになったのかもしれません。

 

- 挙げていただいたミュージシャンはファッションも印象的です。音楽から入り、そのファッションを真似されたりもしましたか。

確かに、カート・コバーンのカーディガンスタイルなんかはカッコいいですよね。古着のカーディガンはやはり当時も流行っていました。ただ、自分はあまり古着を着なくて。というのも、古いものを新しく解釈して作ったようなものが好きなんです。「今」の人に向けて考えて作られたもの、そういうものに、心地よさを感じます。

|バンドで演奏をする高根氏

「今」を愛する理由

- 車もお好きだという高根さん。愛車はマスタングだとお聞きしています。

はい。ただ、マスタングというと「古き良き時代の車」「効率の悪いアメリカンソウル」というイメージが強いかもしれませんが、私の車はそういうマスタングではなく、2014年に新車で購入したものです。当時の雰囲気を残しつつ、現在の技術で作られている良い走りで、とても気に入っています。
さっきの話の続きになりますが、車選びにも、やはり自分のこだわりが出ていますね。マスタングはアメリカ映画を観て憧れたという方も多いので、当時のものに乗りたいファンが沢山います。だけど、自分はそうじゃない。もちろん当時のマスタングもかっこいいけれど、デザインも機能も、「今」のテイストを取り入れたいと思うんです。そういう意味で自分の車は、ハイテクすぎず、古すぎず、自分の「今」に合う絶妙な車だと感じています。

 

- 「今」という言葉は、高根さんがものを選ぶ上で重要なキーワードなのだと感じました。

これはメガネにも言えるのですが、前衛的すぎるものも、クラシックに凝り固まっているものも、私は良しと思いません。時代とともに技術もデザインも進化しているし、その時代にフィットしたものが、使い手の満足につながると考えています。
だから、「今」の人に合うもの、「今」の技術でできることというのを、自分のものづくりでも何よりも大切にしています。デザインコンセプトとしている『憧れ』は、言うなれば一瞬のときめき。その一瞬を閉じ込めるようなものづくりが出来たらいいですね。

|愛車のマスタング

旅先で、現代に意識を戻す

- これまで様々なことに興味を持ってきた高根さんですが、現在の趣味はありますか。

相変わらず色々なことに興味があるのですが、あえて一つ挙げるとするならば、旅でしょうか。数年前から、自分の住むこの日本をもっと知りたい、見てみたいという気持ちが強くなりました。死ぬまでに日本各地の名所を回りたいと思い、先ほどお話ししたマスタングで、とりあえずは近場からあちこち巡っています。

 

- 今までに行った旅先で、特に印象に残っている地はどこですか。

近場ですが、広島県福山市の鞆の浦で、印象的な経験をしました。
鞆の浦は「潮待ちの港」として江戸時代に栄え、万葉集にも詠まれている歴史ある町。裏通りに入ると、いつの時代のものだろうと思うような古い建物が結構残っているんですよ。そこで10分ほど、そういった建物をぼーっと眺めていたんです。そして、さあ戻ろうと現実に意識を戻したときに、不思議な感覚を味わいました。なんというか、現代に意識が戻ったときの感情の動きというものが、とても新鮮だったんです。「今」を強く感じたというか、「今」を生きているのだということを、改めて思い出しました。きっと、自分でも気が付かないうちに当時を想い、タイムスリップしたような気持ちになっていたんですね。
こういう経験が面白いから、私は旅を続けたいと思っています。古いものを通して、「今」を見る。歴史の一番新しいところに自分がいるのだということを感じながら、日々を生き、ものづくりをしていきたいです。

風のように、「今」を流れる

- 前回のインタビューで、「たった1人でいいから『一生掛けたい!』と思ってもらえるものを作りたい」とおっしゃっていたのが印象的でした。良い意味で、野心のない方だとお見受けします。

ブランドをやっている以上、関わってくださる方に喜んでいただきたいので、欲がないわけではないのですが、野心がないと言えば正直そうかもしれません。
流れに身を任せる。今、この瞬間を生きる。それに尽きると思います。 メガネには数々のクラシックな名作もありますが、それらを理解して現代に昇華することが自分の仕事。なるべく自分の足で、工場の職人に会い、お客さまに届けて、あらゆる人の「今」に合うものをつくっていきたいです。

 

ミスタージェントルマンアイウェアを始めて約10年。色々な方に応援していただけるブランドになってきたと、肌で感じています。自分はただ、細く長くこれからも皆さまに愛していただけたらと思うだけ。自分の喜びというのは本当に小さくていいんです。
その時その時の努力をして、いつか振り返ったときに「やってきたことがこうなったんだな」って、結果に満足できたら、きっと嬉しいでしょうね。

過去にも未来にも執着せず、ただ「今」を生きる。高根氏のその姿は、さながら気ままな風のようでもあり、しかし行先をしっかりと見据えて吹いているような、確かな心強さがあった。
来年10周年を迎えるミスタージェントルマンアイウェア。その風はどこまで吹いていくのか、何を巻き込んでいくのか、今後が楽しみでならない。

 

山田ルーナ - 文

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